日本の建設作業者,鳶職の作業服がトレンド?
俄かには 信じられませんが ・・・
‘GQ-UK’(Style),21 May 2025付け
“Why thousands of guys are dressing like a Japanese construction worker”
「なぜ多くの男たちが日本の建設作業員のような格好をしているのか」
の見出し記事を 下記,拙訳・転載します。
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2,3ヶ月ほど前,お気に入りの(fave=favorite)抹茶の店(matcha spot)でくつろいでいた(chilling)。新しい小説を読んでいた―というか,読んでいるふりをしていた。著者の献辞のページ(dedication page)をざっと読みながら(skimmed),この人たちは一体誰なんだろう(ジャニスはまだあなたの人生の恋人?)と不思議に思っていて,ふと顔を上げると(glanced up),外でDMC(ダンスパーティー)をしている男性二人組に気づいた。
彼らのズボンは太くてだぶだぶで(baggy),まるで風船みたいだった。頭にはバンダナを巻き,地下足袋(tabi shoes)を履いていた。まるで日本の建設作業員みたいだ。ただ,私がいたのは日本どころか,建設現場の近くでもなかった。
何かが引っかかった(stuck)。いつの間にか,あらゆる場所で目にするようになった - 現実世界(IRL=In Real Life)だけでなく,インターネットでも。Instagram,TikTok,Pinterest … そして,どういうわけかBlueSkyでさえも。私のFYP(For You Page)は,日本製の建設道具を身につけたロンドンっ子たち(London lads)で溢れていた。ごくごく特殊な(hyper-specific)ニッチな趣味だと思っていたものが,本格的な流行(full-blown thing)へと発展し,ここ数年,メンズウェアに静かに浸透してきた。わずか3週間前,イギリスのTikTokユーザー,アリ・メーガニが,まさに方向性を定めた(skewed towards the very directional end)ハウツー動画を投稿した;まさに流れが速い。
日本の建設作業員のトレンドは,高層ビルや足場などの高所作業に従事する熟練労働者「鳶職人(tobi shokunin)」からヒントを得たものが多い。仕事自体は特に華やかではないものの,ユニフォームには意外性のあるストリート・スタイルのエッジが効いている。
鳶職人の典型的なスタイルは,ショート丈のジャケット,ゆったりとした大きめのニッカ・ボッカ(nikka-bokka)パンツ(米国のニッカボッカーズ(knickerbockers)にちなんで名付けられた),つま先が分かれた地下足袋(split-toe jika-tabi),そして汗を吸収する綿の手ぬぐい(tenugui)のヘッド・ラップなどだ。ポケットやループ,そして様々な分厚い金属クリップが付いたピンストライプのデニム・ジャンプスーツを着こなす人もいるだろう。
「鳶の美学は,伝統と機能性を融合させている。」と,横浜を拠点とするスタイリスト,ブルック・クラム(Brooke Crum)は語る。「時を経て,建設現場の実用的なニーズに応えるように進化し,暑い夏にぴったりの通気性の良いワイド・レッグ・パンツや,グリップ力を高めながらも軽量な足袋靴が登場した。必要性に基づいて生まれたスタイルだが,快適性を重視した柔軟なデザインのために,男たちが実際に着たいと思うものになった。」
2010年代になると,東京の多様なファッションが集まる街,原宿の街角で,ブルー・カラー・スタイルが頻繁に見られるようになった。日本のクールな若者たちが,ブルー・カラーの雰囲気を取り入れ始めた。同時期に,建設業界の文化を称える雑誌『ブルーズ・マガジン(Blue's Magazine)』が創刊され,このトレンドへの関心が高まった。
「日本には,師匠(masters)や年長者を敬うという文化的価値観が深く根付いている。」と,‘Kith and New Balance Japan’ のシニア・マーケティング・アドバイザー,池戸剛は語る。「この考え方は,『守破離(shuhari)』という伝統的な概念と結びついている。これは,修行には守(shu:to preserve),破(ha:to break),そして 離(ri:to transcend)という3段階があることを示している。弟子(apprentices)は,師匠から教わった型を忠実に守り,繰り返す。そして,全身全霊で取り組む(complete dedication)ことで初めて,型から脱却し,最終的にはそれを超越し(transcend),独自の表現を見つけることができる。」
「日本の職人(artisans)の世界では,「守(shu)」を極めなければ「破(ha)」に到達できず,「破」がなければ「離(ri)」は存在しない。「鳶(tobi)」の美的感覚が今もなお存在し,進化を続けているのは,この哲学を反映している。つまり,日本の建築職人のスタイルにおける近年の隆盛(rise)は,規律,敬意,そして親近感(kinship)に深く根ざしている。
現在,‘Visvim’ の中村ヒロキ,‘Neighborhood’ の滝沢伸介,‘The Soloist’ の宮下貴裕らが,このスタイルを取り入れ,さらに進化させている。‘Auralee’ はパリ・ファッション・ウィークでのデビュー時に,ネイビーのチョア・ジャケットとオーバーサイズのトラウザーズでこのスタイルを彷彿とさせた。
‘Undercover’ は2022年春コレクションで,伝統的な帽子(headgear)や柄物のオーバーオールを大胆に取り入れた。さらに2020年末には,米国人アーティストのダニエル・アーシャムが日本のワークウェア・ブランド「寅壱(Toraichi)」とタッグを組み,鳶にインスパイアされた(tobi-inspired)カプセル・コレクションを発表した。当然のことながら,地球の反対側のメンズウェア・ブランドもすぐにこのトレンドに追随した。
「よく知らない人にとっては,建設作業員があの巨大なパンツとバンダナを着けている姿は,すごくクールなものに見えると思う。」と,東京を拠点とするファッション・レポーター,アシュリー・オガワ・クラーク(Ashley Ogawa Clarke)は語る。「インスタグラムのファッション・カルチャー・アカウントで,日本の建設作業員ほどこのスタイルをうまく着こなしている人はいない,みたいな投稿をよく見かける。」
「実は,日本の建設作業員のトレンドは偶然見つけたもの。」と,最近チュートリアルを公開したメガニ(Meghani)は言う。「バギー・ジーンズって,私の好みのシルエットにならないものが多い。そこで,インターネットで探していた時に偶然このスタイルを見つけた。そこから,ニッカ・ボッカ・パンツこそまさに探していたパンツだと分かった。裾が絞られた(cinched)ワイドなバルーン・レッグが,まさに私の理想のスタイルである。」
この突然のブームは,ニッチな日本ブランドに対する西洋諸国の幅広い関心と軌を一にするものである。LVMH(Moët Hennessy - Louis Vuitton SE)によるカルト的人気レーベル ‘Kapital’ の最近の買収や,プーマと ‘Blue Blue Japan’ のコラボレーションもその一例である。米国のストリート・ウェアの影響を大きく受けた日本のストリート・ウェアは,米国でも以前から入手しやすくなっていたが,より伝統的な日本の衣服が米国で人気を集め始めたのはごく最近のことである。
「歴史的に日本では,アメリカン・ヴィンテージはステータス・シンボルとされ,ジャパニーズ・ヴィンテージは他に何も買えない人のためのものとされていた。」と,サンフランシスコで日本の伝統的な技法を用いてカスタム・レザー・グッズを製作するスタジオ,‘Paloma’ の創設者,ラウレアーノ・ファエディ(Laureano Faedi)は語る。「今では,ジャパニーズ・ヴィンテージを求めて訪れる人が増えており,こうした伝統的なシルエットは人気が高まっているだけでなく,例えばバレル・レッグ・ジーンズ(barrel leg jean)のトレンドなど,他のトレンドにも影響を与えている。」
ワークウェアの進化もまた,自然な流れのように感じられる。‘Carhartt WIP’,‘Dickies’,‘Timberland’ といった定番ブランドは,依然として欧米で圧倒的な人気を誇っている。しかし,‘Detroit jackets’ や無数のポケットを備えたカーゴ・パンツは根強い人気を誇る一方で,少し人気が高すぎるのではないか?
「‘Meanswhile’ のような日本のブランドは,空調服(kuchofuku)から直接インスピレーションを得たアイテムを展開している。」と,独立系メンズウェアストア ‘This Thing of Ours’ の創業者兼クリエイティブ・ディレクター,ティム・マクタビッシュは語る。「空調服(kuchofuku)は,多くの鳶職人(tobi workers)が着用する,いわば ‘air-conditioned jackets’ である。湿度が高く暑い環境の中で一日を過ごすためには,彼らにとってなくてはならないものなのだ。」
「さらに,米国のワークウェアは,コーデュロイやダック・キャンバスといった厚手で重厚な素材を使用し,耐久性と頑丈さ(ruggedness)を重視する傾向がある。」と,名古屋出身のファッション・コンテンツ・クリエイター,田中大は語る。「対照的に,日本のワークウェアは,形やシルエット,そして職人技を重視し,誇りと洗練さを反映することが多い。一つ一つのラインや曲線が,落ち着きとエレガントさを感じさせるが,米国のブランドは,かなりラフな印象を与えることがある。」
とはいえ,鳶の影響は目新しいものではない。「‘Issey Miyake’ や ‘Yohji Yamamoto’ といったデザイナーは,長年にわたりこうしたフォルムを探求し,東洋と西洋の影響を融合させ,地に足の着いた先進的なスタイルを生み出してきた。」とクラムは言う。「こうしたシルエットは米国ではまだ広く普及していないが,パリやベルリンといった都市では,構造と実験性(experimentation)を重視するスタイルでよく見かけるだろう。」
そして,‘Maison Margiela’ の伝説的な ‘Tabi’。このシルエットは,このベルギー人デザイナーのおかげでまさに(straight-up)聖杯(grail)となった。1988年のデビュー・ショーは,パリのカフェ・ド・ラ・ガール(Café de la Gare)を上半身裸のモデルが足袋(tabis)を履いて歩くシーンで幕を開けた。マルジェラが発明したわけではないが,足袋を象徴的なものにしたのは間違いない。
それ以来,‘Nike’ から ‘Vetements’ まで,あらゆるブランドがこのスプリット・トゥ・シューズをリメイクしてきた。‘Reebok’ は2020年に ‘Margiela’ と ‘tabi-fied’ を共同開発し,入手困難な(elusive)‘Instapump Fury’ スニーカー(後にクラシック・レザー)のタビ・バージョンをリリースした。しかし,オリジナルに匹敵するものは未だにない。「タビ・ブーツは私のキャリアの中で最も重要な足跡だ。」と,2015年にアントワープの ‘MoMu’ で開催された展覧会で,彼は初めて自身の取り扱いを始めた ‘Gert Bruloot’ に語った。「25年経った今でも,タビ・ブーツだと認識されている。」
かつては純粋に機能的なユニフォームだった日本の建設作業員スタイルは,今や世界的なファッション現象へと進化を遂げた。予想外のトレンドが,見た目だけでなく,何を象徴する(stand for)のかという点においても,しばしば深い痕跡を残すことを改めて認識させてくれる。
鳶職人のように,美的感覚よりも帰属意識が重要視されるのかもしれない。男たちが共感し,身を委ねるサブカルチャーの一つと言えるだろう。鳶クルーには,深い誇り,規律,そして仲間意識(camaraderie)が宿っている。その兄弟愛のようなオーラは,ヤンキー(yankii)や暴走族(bosozoku biker gangs)といった緊密な日本のサブカルチャーと同様に,新進気鋭のファッション・ブロスに魅力的に映るかもしれない - ただし,ヤンキーや暴走族といった,少し混沌とした集団を想像するといい。
欧米の多くのメンズウェア愛好家(menswearheads)にとって,これもまた魅力の一つだ:仲間を見つけたような感覚だ。このシーンはグループ・チャット,サブレディット,Discordサーバー,あるいはInstagramのフィット写真のコメント欄などに点在しているかもしれないが,鳶の精神(tobi ethos)を反映している。
シルエットを解読し,リンクを交換し,巨匠たちを崇拝する中で,交流の中に兄弟愛が生まれる。私たちは皆,オタク精神を育み(nerd out)たいし,同じ志を持つ仲間とそれを楽しみたいのだ。さらに,それは先進的な感覚でもある;ワークウェアを新しい方法で表現する方法であり,ダブル・ニー・パンツを履く男たちよりも一歩先を行く。
東京と仙台で建設会社を経営する加地さんは,鳶のような服装(tobi-style clothing)をファッションとして着ることについてどう思うかと聞かれると,簡潔にこう答えた:「気になりません(It doesn't bother me)」と彼は肩をすくめた(shrugged)。「最近の作業服は見た目を良くするために作られている ― ですから,もしそのスタイルが好きなら,なぜ着ない?」
(転載了)
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