6月9日に亡くなった フレデリック・フォーサイスの生涯
BBC電子版は,6月9日 に亡くなったフレデリック・フォーサイスの死亡記事と共に,彼の生涯に関する記事を6月10日に掲載していました。
‘BBC’,June 10, 2025付け
“Frederick Forsyth: Life as a thriller writer, fighter pilot, journalist and spy”
「フレデリック・フォーサイス:スリラー作家,戦闘機パイロット,ジャーナリスト,スパイとしての人生」
のタイトル記事を下記,拙訳・転載します。
***********************
86歳で亡くなったフレデリック・フォーサイスは,綿密な(meticulously)調査に基づいたスリラー小説を執筆し,数百万部を売り上げた。
元戦闘機パイロット,ジャーナリスト,そしてスパイであった彼の著書の多くは,自身の経験に基づいている。
彼は,物語の電光石火のスピード(lightning pace)を損なうこと(detracting)なく,複雑な(intricate)技術的詳細を物語に織り込んでいた。
彼の調査はしばしば当局を困惑させ,彼が暴露した怪しい戦術(shady tactics)のいくつかは,現実のスパイ活動(espionage)で実際に使用されていたことを認めざるを得なかった。
フレデリック・マッカーシー・フォーサイス(Frederick McCarthy Forsyth)は1938年8月25日,ケント州アシュフォード(Ashford, Kent)に生まれた。
毛皮商人の一人っ子として生まれた彼は,孤独を冒険物語に没頭すること(immersing)で乗り越えた。
彼のお気に入りの作品にはジョン・バカン(John Buchan)やH・ライダー・ハガード(H Rider Haggard)の作品があったが,フォーサイスはアーネスト・ヘミングウェイの闘牛士に関する小説『午後の死(Death in the Afternoon)』が特に好きだった。
彼は闘牛にすっかり魅了され(captivated),17歳の時にスペインへ渡り,ケープを使った練習を始めた。
彼は実際に闘牛をしたことはなかった。その代わりに,グラナダ大学で5ヶ月間過ごした後,英国空軍の兵役に就くために帰国した。
長年パイロットになることを夢見ていたフォーサイスは,デ・ハビランド・ヴァンパイア・ジェット機(de Havilland Vampire jets)を操縦するために年齢を偽った。
1958年,彼はイースタン・デイリー・プレス(the Eastern Daily Press)紙に地元記者として入社した。3年後,ロイター通信社(the Reuters news agency)に移った。
トンブリッジ・スクール(Tonbridge School)在学中,フォーサイスは外国語の分野で優秀な成績を収めたが,それ以外はあまり目立ったことはなかった。
フランス語,ドイツ語,スペイン語,ロシア語に堪能な(fluent)彼は,まさに生まれながらの外国特派員(foreign correspondent)だった。
パリに赴任した彼は,秘密軍事機構(OAS:the Organisation de l'Armee Secrete)のメンバーによるフランス大統領シャルル・ド・ゴール暗殺未遂事件(assassination attempts)に関する数々の記事を取材した。
元軍人たちは,多くの同志がアルジェリア民族主義者との戦いで命を落とした後,ド・ゴールがアルジェリアに独立を認める決定を下したことに憤慨していた。
フォーサイスはOASを「白人植民地主義者でありネオ・ファシスト(white colonialists and neo-fascists)」と呼んだ。
そして,もし彼らが本当にド・ゴールを暗殺したいのであれば,プロの暗殺者を雇うしかないと彼は考えた。
フォーサイスは1965年にBBCに入局した。
2年後,彼はビアフラ南東部の分離独立(secession)に続く内戦を取材するため,ナイジェリアに派遣された。
戦闘が予想以上に長引いたため,フォーサイスは滞在取材の許可を求めた。彼の自伝によると,BBCは「この戦争を取材するのは我々の方針ではない。」 と彼に告げたという。
「報道のマネジメントの匂いがした。」と彼は言った。「報道のマネジメントは嫌いだ。」
彼は仕事を辞め,その後2年間,フリーランスの記者として戦争の取材を続けた。
彼は自身の経験を 『ビアフラ物語(The Biafra Story)』 にまとめ(chronicled),1969年に出版した。後に彼は,ナイジェリア滞在中にMI6で働き始め,その関係は20年間続いたと述べている。
彼はまた,多くの傭兵(mercenaries)と親しくなり,偽造パスポートの入手方法,銃の入手方法,敵の首を折る方法などを教えられた。
こうしたあらゆる手口は,ド・ゴール大統領暗殺未遂事件を描いた 『ジャッカルの日(The Day of the Jackal)』 に盛り込まれ,彼は自宅のアパート(bedsit)で古いタイプライターを使ってわずか35日間で書き上げた(pounded out)。
彼は出版に向けて何ヶ月も努力したが,何度も(a string of)拒否された。
「まず第一に(for starters),ド・ゴールはまだ生きていた。」 と彼は言った。「だから読者は既に,1963年を舞台にした架空の暗殺計画が成功しないことを知っていた。」
最終的に,ある出版社がリスクを冒して少量の印刷を実施,一時 「暗殺者のマニュアル(an assassin's manual)」と評されたこの本は,まず英国で,そして米国で売れ行きが好調になった。
『ジャッカルの日』は,後にフォーサイス・スリラーの伝統的な特徴となる要素を如実に示していた。事実とフィクションを織り交ぜ,実在の人物や出来事を頻繁に用いたのだ。
ジャッカルが教会の墓地で発見された子供の死体の名前を使って英国のパスポートを偽造するという行為は,電子データベースや照合技術が発達する以前の時代においては,全くもって実行可能なものだった。
この物語は1973年に映画化され,エドワード・フォックスが正体不明の銃撃犯役で主演を務め,数々の賞を受賞した。
フォーサイスはその後,『オデッサ・ファイル(The Odessa File)』で成功を収めた。これは,元SS隊員の秘密結社「オデッサ」に守られた「リガの屠殺者(Butcher of Riga)」の異名を持つ悪名高いナチス兵士,エドゥアルト・ロシュマンを追跡しようとするドイツ人記者の物語である。
フォーサイスは調査の一環として,南アフリカの武器商人を装ってハンブルクへ渡った。「彼らの世界に潜入することに成功し,かなり誇らしい気持ちになった。」と彼は後に語っている。
「私が知らなかったのは,(その人物が)私たちと会った直後に書店の前を通ったことだ。すると,そこに 『ジャッカルの日』が置いてあって,裏表紙には私の大きな写真が載っていた。」
この本の映像化によって,真の「リガの屠殺者」の身元が判明した。彼はアルゼンチンに住んでいた。近所の人が地元の映画館でこの映画を見に行ったことがきっかけだった。彼はアルゼンチン当局に逮捕されたが,保釈中に(skipped bai)パラグアイに逃亡した。
この本には,1944年にスイスに輸出されたナチスの金塊についても触れられていた。出版から25年後,ユダヤ人世界会議(the Jewish World Congress)がこの一節を発見し,最終的に10億ポンド相当の金塊を発見した。
サンデー・タイムズ紙によると,フォーサイスの3作目の小説 『戦争の犬たち(The Dogs of War)』 は,アフリカでクーデターを組織した経験に基づいている。
同紙は,フォーサイスが1972年に赤道ギニア(Equatorial Guinea)大統領を追放する(oust)計画を練り上げ,20万ドルを投じてボートを雇い,ヨーロッパとアフリカの有力な兵士を集めたと報じている。
計画は失敗に終わったと言われている。準備が破綻し,兵士たちは目的地から3000マイル離れたカナリア諸島でスペイン警察に阻止されたためだった。
次に 『悪魔の選択(Devil's Alternative)” が出版された。この作品で描かれる英国初の女性首相,ジョーン・カーペンターは,フォーサイスが深く尊敬する政治家マーガレット・サッチャーをモデルにしている。彼女は後に,実名でフォーサイスの小説4作品に登場している。
1982年には伝記小説(biography)へと展開し,“Emeka” が出版された。これは,フォーサイスの友人で,ビアフラが短期間独立していた時代に国家元首を務めたチュクウェメカ・オドゥメグ・オジュクウ大佐(Col Chukwuemeka Odumegwu Ojukwu)の生涯を描いた作品である。
1984年,彼は『第四の核(The Fourth Protocol)』で再び小説に取り組んだ:これは,英国総選挙に影響を与え,極左労働党政権を樹立しようとするソ連の陰謀を描いた複雑な物語である。
この本はサー・マイケル・ケイン(Sir Michael Caine)に多大な感銘を与え,フォーサイスを説得して映画化許可を得て,ベテラン俳優ケインがピアース・ブロスナンと共演した。
1980年代後半,フォーサイスは最初の妻で元モデルのキャロル・カニンガム(Carole Cunningham)と別れ,女優フェイ・ダナウェイ(Faye Dunaway)と並んで写真に撮られた。
1991年に出版された 『ネゴシエイター(The Negotiator)』 はその後も人気を博し,型破りながらも優秀なMI6エージェントを描いた『騙し屋(The Deceiver)』はBBCでミニ・シリーズ化された。
フォーサイスはその後も2本のスリラー作品 『神の拳(The Fist of God)』 と 『イコン(Icon)』を手掛けた後,『マンハッタンの怪人(The Phantom of Manhattan)』 で突如として方向転換(abrupt detour)を図った:これはミュージカルとして成功を収めた『オペラ座の怪人(the Phantom of the Opera)』の続編として書かれた。
この作品は大ヒットとはならなかったが,2010年,アンドリュー・ロイド・ウェバー(Andrew Lloyd Webber)が『マンハッタンの怪人』の要素を取り入れ,『オペラ座の怪人』の続編となるミュージカル『ラブ・ネバー・ダイズ(Love Never Dies)』を制作した。
2作目の短編小説集 『戦士たちの挽歌(The Veteran)』も賛否両論の評価を受けたが,フォーサイスは2003年の政治スリラー 『アヴェンジャー(Avenger)』,そして3年後の 『アフガンの男(The Afghan)』で持ち前のスタイルで復活を遂げた。『アフガンの男』は、以前の『神の拳(Fist of God)』と関連のある作品だった。
この頃には,フォーサイスは ブロードキャスター,そして政治評論家(political pundit)としての名声を確立していた。
彼はBBCの時事討論番組(topical debate programme)‘Question Time’ に,政治的スペクトルの右派として頻繁にゲスト出演していた。
熱心な(committed) EU懐疑論者(Eurosceptic)である彼は,かつて同番組でテッド・ヒース(Ted Heath)元首相を論破した(derailed)ことがある - ヒース元首相は,英国の金準備をフランクフルトに移管することに同意する文書に署名したことを否定した(denials)にもかかわらず,実際には署名していたことを証明したのだ。
70歳を過ぎると,執筆ペースは鈍り始めた。
2010年に出版された 『コブラ(The Cobra)』では,『アヴェンジャー(Avenger)』の登場人物の一部が再登場した。
2013年には,『キル・リスト(The Kill List)』を出版した。これは,若いイスラム教徒に連続殺人を勧めるオンライン動画を投稿していた ‘The Preacher’ と呼ばれるイスラム教狂信者(Muslim fanatic)を軸にした,テンポの速い物語である。
彼はすべての著書をタイプライターで執筆し,インターネットをリサーチに利用することを拒否した。
皮肉なことに,2018年に出版された18作目の小説 『ザ・フォックス(The Fox)』 は,才能あるコンピューター・ハッカーを描いたスパイ・スリラーだった。
フォーサイスはこの作品を最後の作品とすることを発表したが,2024年に2番目の妻サンディが亡くなった後,自主リタイア(self-imposed retirement)から復帰した(came out)。
彼は新たな冒険小説を執筆中だと言い,抽選(raffle)で登場人物に自分の名前をつけるチャンスをプレゼントする企画まで提案した。
1970年代に映画化権を2万ポンドで売却したフォーサイスは,昨年 ‘Sky’ でテレビ用にリメイクされたエディ・レッドメイン(Eddie Redmayne)版『ジャッカルの日』の著作権料を一切受け取らなかった。
ギニア・ビサウ(Guinea-Bissau)への旅行中に感染症(infection)にかかり,危うく足を失う(cost)ところだったため,80代半ばにして(well into),彼はとっくの昔に世界の僻地(fng parts)への調査旅行をやめることに同意していた。
「ジャーナリズムって,ちょっと麻薬みたいなものだ。」と彼は認めた。「あの本能(instinct)は永遠に消えないと思う。」
彼の人生をスリラー小説と同じくらい充実させ,刺激的なものにしたのは,まさにこの本能だった。
(転載了)
*****************
私の,氏の作品 読破計画は 2015年に終了したので,2018年の『ザ・フォックス(The Fox)』を まだ読んでいません。
| 固定リンク | 0
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- トランプ,狂気の行動規範分析本,出版(2026.04.04)
- 60年前の 写真集 “TAKE IVY” を分析した ‘A Take Ivy Take’(2026.03.29)
- TIME誌による 2025年 Best Book 10冊(2025.12.30)
- 化け物 『トランプ』 を造った フランケンシュタイン博士,人生最大の後悔を語る。(その2)(2025.12.05)
- 化け物 『トランプ』 を造った フランケンシュタイン博士,人生最大の後悔を語る。(その1)(2025.12.04)













コメント