エア・インディア墜落事故原因,依然 不明。
2025年6月12日インド時間13時38分頃,ロンドン・ガトウィック行きのエア・インディア171便(ボーイング787-8/登録:VT-ANB)がインド西部のアフマダーバード国際空港からの離陸直後に墜落し,乗客・乗員241人と地上の19人,計260人の死者が出る航空事故が発生しました。
7月12日、インド航空事故調査局(AAIB)が暫定調査報告書を発表し,離陸直後に両エンジンへの燃料供給が停止されており,両エンジンの燃料供給スイッチが1秒以内に「RUN(運転)」から「CUTOFF(停止)」に切り替わっていたこと,最後に発信した高度は625フィート (191 m),対地速度は174ノット (322 km/h)だったことなどが示されました。
この暫定報告書に関して ‘BBC’ 電子版,July 15. 2025付け
“As theories swirl about Air India crash, key details remain unknown”
「エア・インディアの墜落事故について様々な説が飛び交う中,重要な詳細は依然として不明のまま」
の見出し記事を 下記,拙訳・転載します。
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While the preliminary report into what caused the loss of Air India Flight 171 last month has provided some answers, it has also prompted a wave of speculation about its cause.
先月発表されたエア・インディア171便(Air India Flight 171)の墜落原因に関する暫定報告書は,いくつかの解明に繋がったものの,その原因をめぐる憶測も飛び交っている。
ロンドン行きのボーイング787ドリームライナー(Boeing 787 Dreamliner)は,インド西部の都市アーメダバード(Ahmedabad)で,離陸から1分も経たないうちにビルに墜落し,乗客・乗員241名と地上の19名が死亡した。乗客・乗員の生存者は1名だった。
インド航空事故調査局(AAIB:India's Air Accident Investigation Bureau)の報告書(事故に関する最初の公式報告書)に記載されている情報は,パイロットの役割について疑問を投げかけている。
しかし,航空業界の専門家は,調査官が発言内容を非常に選別していると主張している。
What the report says / 報告書の内容
国際条約では,航空事故調査を主導する国は30日以内に暫定報告書(preliminary report)を提出することが義務付けられている。インド航空事故調査局(AAIB)が土曜日に公表した15ページの文書は,この要件を満たしている。
AAIBが調査を主導しているものの,航空機メーカーのボーイング社とエンジンメーカーのGEエアロスペース社は米国企業であるため,米国の利益も代表されている。
報告書は事故原因についていかなる結論も示していない。それでもなお,大きな論争を巻き起こしている。
AAIBは事故機の報告書の中で,離陸後数秒で2つの燃料遮断スイッチ(fuel cut-off switches)が「ラン」から「カット・オフ」の位置に動かされたと述べている。
これによりエンジンは燃料を供給されなくなり(deprived),推力を失った。フライト・レコーダーのデータによると,その後エンジンは再始動されたが,墜落を防ぐには遅すぎた。
これらのスイッチは通常,飛行前にエンジンを始動し,飛行後に停止させるために使用される。スイッチにはロック機構が備わっており,誤って作動するのを防ぐため,操作前に引き抜く必要がある。
報告書にはまた,パイロットの一人がもう一人のパイロットに「なぜ燃料を遮断したのか?」と尋ねたところ,同僚は「そうしていない。」と答えたと記載されている。
しかし,コックピット・ボイス・レコーダーに記録されているはずの会話の直接的な記録は提供されていない。また,どのパイロットが質問をしたのかについても特定されていない。
暫定報告書は,何が起こったかの全体像を示したり,確固たる結論を導き出したりすることを意図したものではないことを覚えておく必要がある。暫定報告書は,長期にわたる(lengthy)可能性のある調査の初期段階で得られた情報を事実に基づいて(factual)要約したものを意味する。また,捜査当局には暫定報告書を公表する義務はない。
Missing information / 欠落した情報
これまでに公表された情報を受け,メディアやインターネット上では,多くの論評家が,事故はパイロットの一人による計画的かつ故意的(deliberate and intentional)行動の結果であると主張している。
この見解に対し,インド民間パイロット協会(the Indian Commercial Pilots' Association)は激しい反発を示し,「不完全または暫定的な情報に基づいてこのような重大な主張(allegation)をすることは,無責任であるだけでなく,関係者やその家族に対して極めて無神経である。」と警告した。
・Don't vilify Air India crash crew: Indian pilots' association
エア・インディアの墜落事故の乗組員を非難するな:インド・パイロット協会
エア・インディアのキャンベル・ウィルソン最高経営責任者(CEO)も従業員宛てのメモで同様の見解を示し,「早まった結論(premature conclusions)」を導き出すことに対して警告した。
報告書が発表されて以来,BBCはパイロット,事故調査官,エンジニアなど,業界関係者に幅広く話を聞いてきた。実際に何が起こったのかについては様々な見解があるが,現在重要な情報が欠落しているというのが有力な見解(dominant view)である。
「彼らは現時点で私たちに知ってほしいこと(stuff)だけを伝え,知られたくないことは控えている(withheld)。」と,あるパイロットは匿名を条件に説明した。「これは完全な報告書ではない。」
主な批判の一つは,コックピット・ボイス・レコーダーの記録が欠如していることである。記録があれば,燃料遮断スイッチ(the fuel cut-off switches)に関するパイロット間の会話の文脈を明らかにすることができる。
コンサルタント会社リーハム・カンパニー(Leeham Company)の航空アナリスト(aeronautical analyst),ビョルン・フェアムは,これは「全く受け入れられない(totally unacceptable)」と述べた。
「報告書には技術的な詳細がすべて記載されている。そして,会話に関する言及もあるものの,誰が話しているのかさえ分からない。」とフェアムは述べた。
フェアム氏はまた,操縦席でスイッチが作動から停止に切り替わって(flipped)から,10秒後に最初のスイッチが元の位置に戻されて最初のエンジンが再点火される(relight)までの間に何が起こったのかが全く言及されていないことにも懸念を示した。
「誰かが何かを隠そうとしている(It's someone trying to hide something)。」と彼は述べた。
一方,技術系筋は,報告書は「非常に限定的」であり,スイッチが切り替わる直前のエンジンの状態に関する詳細な情報は何も含まれていないと述べた。報告書には,「エンジンへの燃料供給が遮断されたため」,エンジン回転数が離陸時の値から低下し始めたと記されている。
関係者によると,これは重要だという。なぜなら,スイッチを遮断状態に切り替え,再び “run” 状態に戻すことは,既に出力が失われつつあるエンジンを再始動させるためにパイロットが訓練される操作だからだ。
英国の航空コンサルタント(aviation consultant)で元航空事故調査官のティム・アトキンソンは,「いくつかの重要な(salient)事実は提示されているものの,多くの疑問が残る報告書を読むのは非常に残念だ。」と述べた。
報告書の中で議論を呼んでいるもう一つの要素は,米国連邦航空局(FAA:US Federal Aviation Administration)が2018年に発行した特別耐空情報速報(Special Airworthiness Information Bulletin)として知られる安全情報速報(safety bulletin)への言及である。
これは,ボーイング737型機の一部運航者から,燃料遮断スイッチのロック機能が解除された(disengaged)状態で取り付けられており,誤ってスイッチが切り替わってしまう可能性があるという報告があったことを航空業界に警告するために使用された。
当時,FAAはこれを「耐空性に関する懸念(airworthiness concern)」と表現したが,「耐空性指令(Airworthiness Directive)」と呼ばれるものによる強制的な措置を必要とするほどの「危険な状態ではない(not an unsafe condition)」と述べた。
787を含む,同様のスイッチを搭載した複数のボーイング機種の運航者には,簡単な点検を実施するよう勧告されていた。
調査報告書によると,エア・インディアはこれらの点検を実施していなかったため,事故は故障したスイッチが誤って切り替わったことが原因ではないかとの憶測が広がっている。
しかし,BBCが閲覧した内部文書によると,FAAはその後,この問題が安全性を損なうものではないとの見解を何度も表明している(reiterated)。
エンジニアリング関係者によると、報告書には墜落機のスロットル制御モジュールが2回交換されており、直近は事故の2年前だったと記されている。これにはカット・オフ・スイッチの交換も含まれていたはずだ。
リーハム社のビョルン・フェアムによると,報告書に記載されているFAAの助言への言及は,事故の状況とは全く無関係(totally irrelevant)だという。しかしながら,インド民間航空総局(India's Directorate General of Civil Aviation)は,FAAの当初の通達の対象となった全ての航空機の運航者に対し,7月21日までに検査を実施するよう要請した。
元事故調査官のティム・アトキンソンは,報告書の曖昧さ(vagueness)は意図的なもの(deliberate)だった可能性があると指摘する。墜落事故の原因を示唆しつつも,明確な説明を避けようとするためだった。
「最悪の報告書とは,『行間』を読むように書かれた報告書だ。もしそれが今回の報告書だとしたら,調査官たちの功績は認められない」と彼は述べた。
一方,171便で何が起こったのか,確かな答えを求める人々は,おそらく待たなければならないだろう。国際条約では,最終報告書は事故後1年以内に公表されることが定められている(stipulate)。しかし,実際には,それよりもはるかに長い時間がかかる可能性がある。
(転載了。)
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ランディング・ギア(車輪)が格納されていなかったと報道されましたが,今回は触れていません。
可能性として 副操縦士が「車輪格納」レバーと 「燃料遮断」レバーを 間違えたという,信じられない話もありました。
1982年に発生した「日航羽田沖墜落事故 」・「日航逆噴射事故」などと呼ばれた,日本航空のダグラス DC-8-61(福岡空港発・東京国際空港行定期350便)の墜落事故を思い出します。
羽田空港 着陸進入中の低高度で機長が操縦桿を押し,逆噴射装置を作動させたことが原因で羽田空港沖に墜落した航空事故で,乗員乗客174人中24人が死亡,1499人が負傷しました。
機長は業務上過失致死罪により逮捕されましたが,精神鑑定により妄想性精神分裂病(現:統合失調病)と診断され,心神喪失状態にあったとして東京地方検察庁により不起訴処分で釈放となりました。
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