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2025年12月 4日 (木)

化け物 『トランプ』 を造った フランケンシュタイン博士,人生最大の後悔を語る。(その1)

トランプ著 “The Art of the Deal” の ゴーストライター,全てを語る

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Wikipediaより-
『トランプ自伝 アメリカを変える男』(“Trump: The Art of the Deal”,1987)は,ドナルド・J・トランプと ジャーナリストのトニー・シュウォーツが発表した書籍である。回想録とビジネス指南書の要素を備えた本書は初めてトランプ名義で出版された書籍であり,彼の知名度向上のきっかけのひとつとなった。本書は 『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー・リストに48週ランクインし,そのうち13週で1位を獲得した。トランプは本書を自身の最も誇れる業績のひとつであり,聖書に次いで好きな本であると述べている。

シュウォーツは本書を執筆したことを 「間違いなく生涯で最大の後悔」であると述べ,彼と出版者のハワード・カミンスキーの両者はトランプが本書の執筆の実作業には関与していなかったと主張した。トランプは個人的に著者問題について相反する説明をしている。

これに関連して

THE NEW YORKER’,July 18, 2016付けの
Donald Trump’s Ghostwriter Tells All
「ドナルド・トランプのゴーストライター,すべてを語る」
のタイトル記事を 下記,拙訳・転載します。

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The Art of the Deal” made America see Trump as a charmer with an unfailing knack for business. Tony Schwartz helped create that myth—and regrets it.
The Art of the Deal(トランプ自伝 アメリカを変える男)は,トランプをビジネスにおける確かな才能を持つ魅力的な人物としてアメリカ国民に認識させた。トニー・シュウォーツ(Tony Schwartz)は,この神話の創造に加担し,そしてそれを後悔している。

001h_20251127064901 昨年6月,ニューヨーク州リバーデールの緑豊かな裏道に面したトニー・シュウォーツの広々とした家の外が夕闇に包まれる頃,彼はノート・パソコンを取り出し,その日のビッグ・ニュースを確認した:ドナルド・J・トランプが大統領選への出馬を表明したのだ。シュウォーツは演説のビデオを見ながら,自分自身もその影響を受けていると感じ始めた。

トランプは,五番街のトランプ・タワーのロビーに集まった群衆を前に、自らの資質(qualifications)を説き,「“The Art of the Deal(邦題:トランプ自伝 アメリカを変える男)』 を著したリーダーが必要だ」と述べた。もしそうだとするなら,トランプではなく自分が出馬すべきだとシュウォーツは思った。シュウォーツはツイートでこう綴った。「“The Art of the Deal” を執筆したという理由で,大統領選に出馬を勧めてくれたドナルド・トランプに心から感謝します。」

シュウォーツは,トランプの1987年の画期的な回顧録(breakthrough memoir)のゴーストライターを務め,表紙に共同署名,50万ドルの前金の半分,印税の半分を獲得した。この本は驚異的な成功を収め,タイムズ紙のベスト・セラー・リストに48週間ランクインし,そのうち13週間は1位を獲得した。100万部以上が売れ,数百万ドルの印税を稼いだ。この本はトランプの名声をニューヨーク市をはるかに超えて広め,彼を成功した大物実業家の象徴(tycoon)とした。シュウォーツが当時ライターとして働いていたニューヨークの元編集者兼出版者,エドワード・コスナー(Edward Kosner)は,「トニーが トランプを創造した。彼はフランケンシュタイン博士だ」と述べている。

1985年後半から,シュウォーツはトランプと18ヶ月間を過ごした。彼のオフィスに泊まり込み,彼のヘリコプターに同乗し,会議に同行し,マンハッタンのアパートやフロリダの邸宅で週末を過ごした。その間,シュウォーツはトランプ一家を除けば,誰よりもトランプのことをよく知っていたと感じていた。しかし,ツイートを投稿するまで,シュウォーツは何十年もトランプについて公の場で語っていなかった。

ゴーストライターになることは彼の野望ではなかったし,喜んで次のステップに進んでいた。しかし,新候補者が45分間も演説する様子を録画で見ていた時,彼は奇妙なことに気づいた:数十年もの間,トランプは自分が本を書いたと思い込んでいたようだ。シュウォーツはこう思ったことを覚えている。「就任初日に,しかも簡単に反論できるのに,嘘をついたのなら,彼はどんなことでも嘘をつくだろう。(“If he could lie about that on Day One—when it was so easily refuted—he is likely to lie about anything.)」

トランプの選挙運動が成功する見込みは薄いと思われたため,シュウォーツはあまり心配する必要はないと自分に言い聞かせていた。しかし,トランプが演説の終盤でメキシコ移民を「強姦犯(rapists)」と非難した時,シュウォーツは不安に襲われた。何百時間もトランプを直接観察してきたシュウォーツは,トランプの魅力的な(beguiling)強さと,彼を失墜させる(disqualifying)弱点について,並外れて深い理解を持っていると感じていた。

しかしながら,多くの米国人はトランプを,ビジネスにおける確かな才能(knack)を持つ,魅力的で生意気な(brash)起業家(entrepreneur)と見ていた。これはシュウォーツが作り上げた神話的なイメージだ。「自分の直感を信じることは価値がある。」とトランプは著書の中で述べ,自分が一度も足を踏み入れたことのないホテルを購入して数億ドルの富を築くことになるだろうと付け加えている。

その後数ヶ月,トランプが予想を覆し共和党候補の最有力候補としての地位を確立するにつれ,シュウォーツは真実を明らかにしたい(set straight)という思いを募らせた。彼は以前からジャーナリズムを離れ,コンサルティング会社「エナジー・プロジェクト」を立ち上げていた。同社は従業員の「肉体的,感情的,精神的,そしてスピリチュアル」な士気(morale)を高めることで生産性向上を約束している。フェイスブックなどを顧客とするこの会社は成功を収めており,シュウォーツの同僚たちは彼に政治の争い(fray)には関わらないよう勧めていた。

しかし,トランプ大統領の誕生は彼を恐怖に陥れた。それはトランプのイデオロギーのせいではなかった - シュウォーツは トランプがイデオロギーを持っているとは思っていなかった。問題は トランプの,病的なほど(pathologically)衝動的で(impulsive)自己中心的な性格(personality)だと考えていた。

シュウォーツは トランプに対する懸念(reservations)を記した記事を発表することを考えたが,ためらった。“Art of the Dealというお世辞(flattering)をネタに金儲けしたため,自身の信頼性と動機が疑われることを分かっていたからだ。それでも,選挙戦を見るのは耐え難い苦痛だった(excruciating)。シュウォーツは,もし沈黙(mum)を守りトランプが当選したら,自分を決して許さないと決意した。6月,彼は沈黙を破り,ボズウェル(Boswell:伝記作家)役を演じることで知り合ったトランプについて,初めて率直な(candid)インタビューに応じた。

豚に口紅を塗ったようなものだ(I put lipstick on a pig)。」と彼は言った。「トランプをより広い注目を集め,実際よりも魅力的に見せるような描写に加担してしまったことを深く後悔(sense of remorse)している。」 と彼は続けた。「トランプが勝利し,核兵器のコードを入手すれば,文明の終焉につながる可能性が非常に高いと心から(genuinely)信じている。

もしシュウォーツが今,“The Art of the Dealを執筆していたら,全く異なる内容の本になり,全く異なるタイトルになっていただろうと語る。タイトルを尋ねると,彼は「社会病質者(The Sociopath)」と答えた。

トランプが自伝を書くというアイデアは,トランプやシュウォーツから生じたものではなかった。発端はメディアの大物(magnate),サイ・ニューハウス(Si Newhouse)だった。彼の会社アドバンス・パブリケーションズは当時ランダム・ハウス(Random House)を所有し,現在も同誌の親会社であるコンデ・ナスト(Condé Nastを所有している。「これは間違いなく,そしてほぼ唯一無二の,サイ・ニューハウスのアイデアだった」と,本書の編集者ピーター・オスノス(Peter Osnos)は回想する。コンデ・ナストが所有するGQ誌がトランプの表紙記事を掲載したことで,ニューハウス(Newhouse)は店頭での売り上げが異例の好調さに気づいた。

ニューハウスはこの企画についてトランプに電話をかけ,その後,彼を訪問して議論した。ランダム・ハウスは何度かの会合を重ね,この企画の実現を目指した。ある時,当時ランダム・ハウスを率いていたハワード・カミンスキー(Howard Kaminsky)は,分厚いロシア小説を 征服者の英雄のようなトランプの写真が描かれ,上部には金色のブロック体でトランプの名前が大きく書かれているダミー・カバーで包んだ。カミンスキーは,トランプが模型に満足していたものの,「私の名前をもっと大きくしてほしい。」と一つ提案したことを回想する。50万ドルの前金を確保した後,トランプは契約に署名した。

この頃,当時一流の若手雑誌ライターの一人だったシュウォーツは,トランプ・タワーにあるトランプのオフィスに立ち寄った。シュウォーツは以前にもトランプについて記事を書いていた。1985年,彼はニューヨークで「ドナルド・トランプの異色の物語(A Different Kind of Donald Trump Story)」と題する記事を発表した。その記事では,トランプを聡明な大物実業家(mogul)としてではなく,セントラル・パーク・サウスに購入したビルから家賃統制(rent-controlled)や家賃安定化(rent-stabilized)の対象となっているテナントを追い出そう(evict)として失敗した,不器用な(ham-fisted)悪党(thug)として描いていた。入居者を困らせるためにホームレスをビルに住まわせる計画も含まれていたトランプの試みは,シュウォーツが「失敗の遁走,手探りと失策の茶番劇(fugue of failure, a farce of fumbling and bumbling)」と表現するものとなった。

表紙のポートレートには,ひげを剃らず,不機嫌で,汗でテカテカになったトランプが描かれていた。しかし,シュウォーツが驚いたことに,トランプはその記事を気に入っていた。彼は表紙をオフィスの壁に掛け,金箔押しの便箋にシュワルツ宛てのファン・レターを書いた。「誰もが読んだみたいだ。」と,シュウォーツが保管しているそのレターの中でトランプは熱く語っていた(enthused)。

「ショックだった。」とシュウォーツは私に言った。「トランプは私が今まで会ったどんな人間像にも当てはまらなかった。彼は宣伝に執着していて(obsessed),何を書いても気にしなかった」。彼は続けた。「トランプには二つの立場しかない。卑劣な負け犬(scummy loser)か,嘘つきか,とにかく何であれ,あるいは自分が最高であること。私は最高になった。彼はタフ・ガイだと思われたかったし,表紙を飾るのが大好きだった」。シュウォーツは返信し,「私が長年書いてきた人たちの中で,あなたは間違いなく一番 潔い人(sport)だ。」と書いた。

シュウォーツはさらにインタビューを求め,今度はプレイボーイ誌のインタビューを担当した。しかし,トランプは謎めいた,一言で片言の返答ばかりで,シュワルツは苛立ちを募らせた。「不思議なことに,彼は私の質問に答えてくれなかった。」 とシュウォーツは語った。20分後,トランプは自分について 新しいことを 何も明かしたくない,高額な本の出版契約(lucrative book deal)を結んだばかりで,一番良い素材を取っておく必要があると説明したという。

「どんな本?」とシュウォーツは尋ねた。
「自伝(autobiography)だ。」 とトランプは答えた。

「あなたはまだ38歳だ - まだ自伝なんて書いてないじゃないか!」とシュウォーツは冗談を言った。
「ああ,分かってる。」とトランプは答えた。

「もし僕があなただったら」 とシュウォーツはトランプに言ったことを思い出した。「『“The Art of the Deal” (直訳:取引の芸術)』 という本を書くよ。きっとみんな興味を持つだろう。」
「その通りだ。」 とトランプは同意した。「君は書きたいのか?」

シュウォーツは数週間,この件について熟考した。これはファウスト的な取引(Faustian bargain)になるだろうと覚悟していた。生粋のリベラルであるシュウォーツは,トランプの冷酷で(ruthless)ひたむきな(single-minded)利益追求を決して称賛していなかった。「人生で何度かの,悪魔と高潔な側(the Devil and the higher side)に引き裂かれた時の一つだった。」と彼は語った。マンハッタンのブルジョアで知識階級の家庭に育ち,名門私立学校に通ったものの,同級生の何人かほど裕福ではなかった - そして,多くの同級生とは違い,彼には信託基金(trust fund)もなかった。

「私は恵まれた環境(privileged)で育った。」と彼は言った。「しかし,両親は 『あなたは自分で何とかしなさい』 とはっきり言っていた。」 トランプがこの申し出をした頃,シュウォーツの妻デボラ・パインズは次女を妊娠しており,マンハッタンのアパートの住宅ローン(mortgage)が既に高額だったため,家族が住み続けられるか心配していた。「お金のことを過剰に心配していた。」とシュウォーツは語った。 「お金があれば安全で安心できると思っていた。少なくとも,それが私の正当化(rationalization)だった。」

同時に,トランプの金を受け取ってトランプを代弁すれば(adopted Trump’s voice),ジャーナリストとしてのキャリアに深刻なダメージが与えられることも分かっていた。彼のヒーローは、トム・ウルフ(Tom Wolfe),ジョン・マクフィー(John McPhee),デイヴィッド・ハルバースタム(David Halberstam)といった文芸ノンフィクション(literary nonfiction)作家たちだった。ゴーストライターの仕事は,単調で面白くない仕事(hackwork)だった。しかし,最終的にシュウォーツは金額を提示した。彼はトランプに,前金と本の印税を半分ずつ払ってくれれば,仕事を引き受けると申し出た。

ゴーストライターに対しては異例の気前の良さだった(generous)。タフな交渉人として知られていたトランプは,その場で同意した。「予想外のとんでもない大金(huge windfall)だった。」 とシュウォーツは回想する。「しかし,自分を裏切っていることは分かっていた。文字通り,裏切り(selling out)という言葉は私の仕事ぶりを表すために作られた。」 まもなく,‘SPY’誌は彼を 「元ジャーナリストの トニー・シュウォーツ」と呼ぶようになった。

シュウォーツは “The Art of the Dealを容易な仕事だと考えていた。構成はシンプルだ:トランプが手がけた最大級の不動産取引を6件ほど記録し(chronicle),ビジネスで成功するための決まり文句(bromides)をいくつか並べ,トランプの人生について掘り下げていく。リサーチのため,彼は毎週土曜日の朝にトランプにインタビューする計画を立てていた。

しかし,最初のインタビューは計画通りには進まなかった。トランプが トランプ・タワーの頂上にある(atop)大理石と金箔で覆われた(marble-and-gilt)自宅のアパートを案内した後 ― シュウォーツには ホテルのロビーのようで 人が住んでいないように見えた ― 二人は話し始めた。しかし,シュウォーツが トランプの最も本質的な特徴の一つと考える 「集中力がない(no attention span)」ということによって,議論はすぐに頓挫した(hobbled)。

シュウォーツの記憶によると,当時のトランプは記者たちに概して愛想よく接し(affable),要求に応じて短く,面白おかしくも自惚れた(immodest)発言をしていたという。ニューヨークでのインタビューでも トランプは積極的に話してくれたが,それほど時間や深い考察を必要とするものではなかった。しかし,本のためには,トランプは持続的で思慮深い(thoughtful)回想録(recollections)を シュウォーツに提供する必要があった。

彼はトランプに幼少期について詳しく話してほしいと頼んだ。スーツとネクタイ姿で数分座っただけで,トランプは焦燥し,いらだち始めたbecame impatient and irritable)。シュウォーツの記憶によると,彼は「教室でじっと座っていられない幼稚園児(kindergartner)のように」 そわそわしていた(fidgety)という。シュウォーツが問い詰めても,トランプは幼少期のことをほとんど覚えていないようで,退屈していることを露わにした。シュウォーツの期待をはるかに上回る速さで,トランプはミーティングを終えた。

毎週(week after week),このパターンが繰り返された。シュウォーツはセッションの時間を短くしようと試みたが,トランプの発言は奇妙なほど断片的で(truncated)表面的な(superficial)ものにとどまった。

「トランプについては千変万化の方法(thousand ways from Sunday)で書かれてきたが,彼の本質的な側面は十分に理解されていないようだ。」 とシュウォーツは語った。「人々が書く多くのものに暗黙のうちに表れている(implicit)が,明確に示される(explicit)ことは決してない - 少なくとも,私は見たことがない。つまり,彼自身の自己顕示(self-aggrandizement)以外の話題に数分以上集中し続けることは不可能であり,たとえ集中できたとしても … 。」

シュウォーツは呆れたように首を振り,言葉を詰まらせた(trailed off)。彼は大統領候補としてトランプの集中力の欠如(inability to concentrate)を憂慮すべき点と見ている。「もし彼が 危機管理室(Situation Room)で危機について説明を受けなければならないとしたら,長時間集中し続ける(paying attention over a long period of time)とは想像もできない。」と彼は語った。

最近の電話インタビューでトランプは,むしろ危機において最も重要なスキル,つまり妥協を築ける能力を持っていると語った。発表の中で “The Art of the Dealを強調した(touted)のは,近年の大統領には彼ほどの強靭さと手腕(toughness and finesse)が欠けていると考えているからだと彼は説明した。「中国との貿易赤字を見てくれ。イランとの合意を見てくれ。私は取引で財を成してきた。私はそれをしている。得意としている。それが私のやり方だ。」

しかしシュウォーツは,トランプの集中力のなさ(short attention span)が 「驚くほど(stunning)表面的な知識(superficial knowledge)と,あからさまな無知(plain ignorance)」を生み出していると考えている。「だからこそ,彼は最初の情報源としてテレビを好む。情報は簡単に理解できる(digestible)短い音声で提供される。」と彼は述べた。さらに,「トランプが成人してから本を最後まで(straight through)読んだことがあるとは到底思えない(seriously doubt)。」 と付け加えた。シュウォーツによると,トランプを観察した18ヶ月間,彼の机の上,オフィスのその他の場所,あるいは自宅のアパートで本を見たことなど一度もなかったという。

他のジャーナリストも,トランプの読書への関心のなさに気づいている。5月,FOXニュースのメーガン・ケリー(Megyn Kelly)記者が,聖書と “The Art of the Deal以外で好きな本を挙げるようにトランプに尋ねたところ,トランプは1929年の小説 『西部戦線異状なし(All Quiet on the Western Front)』を挙げた。トランプがこの本を読んでから何年も経っていると疑い,ケリー記者はトランプに 最近読んだ本について尋ねた。

「節(passages)を読み,範囲(areas)を読み,章(chapters)を読む ― 時間がないんだ。」 とトランプは言った。‘The New Republic’紙が最近指摘したように,この姿勢は,最新の書籍を習慣的に読むバラク・オバマや,政治顧問のカール・ローブと激しい読書競争を繰り広げたとされるジョージ・W・ブッシュなど,ほとんどのアメリカ大統領には当てはまらない。

トランプの最初の妻イヴァナ(Ivana)は,トランプがアドルフ・ヒトラーの演説集 “My New Orderをベッド脇の戸棚に保管していたと主張をしたのは有名である。1990年,当時パラマウント社の幹部だったトランプの友人マーティ・デイビス(Marty Davis)が,トランプにこの本を贈ったと ‘Vanity Fair’ のマリー・ブレナーに証言して この話に信憑性(credence)を与えた。

「トランプが興味を持つだろうと思った。」とデイビスは彼女に語った。しかし,ブレナーが トランプにその本について尋ねると,彼はその本をヒトラーの別の著作 “Mein Kampf(我が闘争)だと誤認した。どうやら彼はタイトルすら読んでいなかったようだ。「もし 私がこの演説集を持っていたとしても ― 持っているとは言っていないが ― 決して読まないだろう。」 とトランプはブレナーに語った。

窮地に陥ったシュウォーツは,トランプにさらなる情報を渡すよう仕向ける戦略を考えた。彼は,邪魔が少ないパーム・ビーチにあるトランプの邸宅,マール・ア・ラーゴで週末を過ごす計画を立てた。庭で二人が雑談していると,イヴァナが冷たく(icily)通り過ぎた。シュウォーツが夫の限られた自由時間を奪おうとしていることに明らかに苛立っていた。トランプは再び苛立ちを募らせた。シュウォーツの記憶によると,土曜日の昼食のずっと前から,トランプは「ほとんどかんしゃくを起こした(threw a fit)」という。彼は立ち上がり,これ以上の質問には耐えられないと宣言した。

シュウォーツは部屋に行き,著作権代理人(literary agent)のキャシー・ロビンズに電話をかけ,本の執筆はできないと伝えた(ロビンズは これを認めている)。しかし,ニューヨークに戻る途中、シュウォーツは別の計画を思いついた。トランプの仕事場に付きまとい,さらに重要なことに、オフィスの電話を聞くことで,彼の生活を盗聴する(eavesdropping)というのだ。そうすれば,トランプから長々とした考えを引き出す(extracting)必要はない。シュウォーツがこのアイデアをトランプに 提案すると,トランプは気に入った。

それ以来,ほぼ毎日,シュウォーツはトランプ・タワーのオフィスでトランプから約8 ft離れた場所に座り,トランプの電話回線の内線を聴いた。シュウォーツによると,トランプに電話をかけてきた銀行家,弁護士,証券会社,記者たちは,誰も自分が盗聴されていることに気づいていなかったという。通話は通常 長くは続かず,トランプのアシスタントが会話の切り替えを手伝っていた。トランプが誰かと話している間,アシスタントはよく次の電話の相手を知らせるポスト・イットを持って部屋に入ってきた。

「彼は人を弄んでいた。」 とシュウォーツは回想する。ビジネス・パートナーとの電話では,トランプはお世辞を言ったり,威圧したり(bully),時には怒ったりした(get mad)が,常に計算されたやり方(calculated way)だった。会話が終わる前には,トランプは「最新の成功談を話してくれた。」 とシュウォーツは言う。電話の最後に別れを告げる代わりに,トランプはいつも 「君は最高だ!」と締めくくっていた。トランプがシュウォーツに聞かれるにはプライベートすぎると考えた電話は一つもなかった。「彼は注目されるのが大好きだった。」 とシュウォーツは回想する。「もし30万人が聞いていたら,もっと嬉しかっただろう。」

今年,シュウォーツは,選挙戦後のために,より思慮深く,ニュアンスに富んだドナルド・トランプ像を用意しておかなければならないという意見を耳にした。「そんなものはない。」とシュウォーツは断言する。「プライベートなトランプなど存在しない。」 これは後知恵(hindsight)の問題ではない。“The Art of the Dealを執筆中,シュウォーツは日記をつけ,トランプの個性に驚嘆し,トランプは世間の注目を浴びたいという欲求に突き動かされているように思えたと記している。

 「彼はただ 『​​踏み鳴らす,踏み鳴らす,踏み鳴らす(stomp, stomp, stomp)』 だけだ - 外部から認められたい,もっと大きくなりたい,もっと多くなりたい,といった,特に何の目的もないことを延々と繰り返すだけだ。」と,19861021日に彼は記している。しかし,数日後の日記に彼が記しているように,「トランプがただ憎しみに満ちた人物,あるいはもっとひどい,一面的な ほらふきで描かれるよりも,共感を呼ぶ人物,奇妙なほど(weirdly)共感を呼ぶ人物で描かれる方が,この本ははるかに成功するだろう」。

盗聴によってインタビューの問題は解決したが,新たな問題も生じた。トランプが電話でビジネスについて話しているのを聞いた後,シュウォーツは トランプに短い追加質問をした。そして,取引に関わっている他の人々に電話をかけ,トランプから得た情報を補強しようとした。しかし,彼らの説明はしばしばトランプの話と真っ向から矛盾していた。「嘘をつくのは彼にとって第二の天性(second nature)だ。」とシュウォーツは述べた。「私がこれまで会った誰よりも,トランプにとって 自分がその瞬間に言っていることは何でも真実だ,あるいはある程度真実だ,あるいは少なくとも真実であるべきだと自分に言い聞かせる能力を持っている。

シュウォーツによると,トランプが彼についた嘘はしばしば金銭に関するものだった。「何かにいくら払ったか,所有している建物の価値はいくらか,あるいは実際には破産寸前だったカジノの一つがどれだけの利益を上げていたか,といったことだった」。トランプはマール・アー・ラーゴをたった800万ドルで購入したと自慢したが,近くの海岸線を記録的な額で購入したことは省いていた。ゴシップ欄が チャールズ皇太子が トランプ・タワーのマンション数戸の購入を検討していると誤って報じた後,トランプはその噂の出どころは全く知らないと示唆した (「確かに我々には悪影響はなかった。」 と彼は著書 “The Art of the Dealの中で述べている)。

Village Voice’ の記者ウェイン・バレットは後に,トランプ自身がジャーナリストにこの話を仕込んだことを明らかにした。シュウォーツもトランプがメディアにそのようなトリックを仕掛けているのではないかと疑い,トランプが偽名を使って報道機関に頻繁に電話をかけているという,広まっている噂について尋ねた。トランプはそれを否定しなかった。シュウォーツの記憶によると,トランプはニヤリと笑って「気に入っただろう?」と言ったという。
・・・

(その2)に続く。

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