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2025年12月30日 (火)

TIME誌による 2025年 Best Book 10冊

TIME’,Dec.10,2025付け
The 10 Best Books of 2025
下記,拙訳・転載します。

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厳しい一年 ― そして,最近,楽だったと言える一年はいつあっただろうか? ― 本は命綱であり,慰め(balm)であり,心の拠り所 あるいは 立ち直る所となることがある。今年出版された,エンターテイメント性,楽しさ,感動(poignant),そして宝物となる数々のフィクションとノンフィクションの新刊の中で,特に優れた作品は,雑音をかき消すような新鮮な視点と力強い声を提供してくれた。S.A.コスビー(S.A. Cosby)とR.F.クァン(R.F. Kuang)は,文学的なインパクトをスリルのジャンルと融合させた,刺激的な(high-octane)旅へと私たちを誘ってくれた。

ミリアム・トウズ(Miriam Toews)とイーユン・リー(Yiyun Li)は,深刻な個人的な喪失を深く掘り下げ(grave),悲しみの淵からの洞察を提供した。ケイティ・キタムラ(Katie Kitamura)とリリー・キング(Lily King)は,人間関係を顕微鏡で観察し,我々が築く絆(bonds)がどのように,そしてどれほど徹底的に我々を形作るのかを探求した。このリストに収録された本は,現実の,そして想像上の語り手たちが人生最大の試練に立ち向かい,それでも生き抜く姿を描いている。読者が求める,まさにタイムリーで価値あるメッセージと言えるだろう。 2025 年のベスト 10 冊を紹介する。

10. A Truce That Is Not Peace, Miriam Toews
       平和ではない休戦,ミリアム・トウズ

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ミリアム・トウズが20年以上ぶりに発表するノンフィクション作品は,フィクションを前提とした設定から始まる:メキシコで開催される文学フェスティバルに先立ち,彼女は「なぜ書くのか?」という問いについて考えるよう求められる。しかし,イベントのディレクターを納得させる答えを思いつく(conjure)ことがあまりにも難しく,出演がキャンセルされてしまう。この一時的な障害は,実体験の積み重ねであり,後に豊かで長期的なプロジェクトへと発展していく。

本書『平和ではない休戦』では,カナダ出身の著名な作家であるトウズが,幼少期や執筆活動を始めた動機,近親者の死,メノナイト教徒(Mennonite)としての生い立ち,子育てにおける様々な出来事(misadventures),そして人格形成期の出来事を淡々と綴る。皮肉で(wry)胸が締め付けられるような(gutting),そして爽快な(exhilarating)この回想録で,トウズは自身の人生と創作プロセスを光に照らし出し,それらを繋ぐ糸を検証する。

9. King of Ashes, S.A. Cosby
     灰の王,S.A. コスビー

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『黒き荒野の果て(Blacktop Wasteland)』,『頬に哀しみを刻め(Razorblade Tears)』,『すべての罪は血を流す(All the Sinners Bleed)』の著者であり,ここ6年間で最も高く評価されている犯罪小説作家の一人であるS.A.コスビーが,またしても陰惨で(grisly)手に汗握る南部ノワール(Southern noir)小説をお届けする。アトランタ在住のファイナンシャル・アドバイザー,ローマン・カラザース(Roman Carruthers)が,生まれ育ったバージニア州ジェファーソン・ランに戻り,数々の家族の危機に立ち向かう。
父親は悲惨な交通事故に遭い,妹は家業を継ぐプレッシャーに押しつぶされそうになり(buckling),弟は凶悪な(vicious)ギャングに借金を抱えている。ローマンはすぐに,全てが父親の「事故」と関係していることに気づく。そして,幼い頃に失踪した母親に何が起きたのかという謎も,依然として尾を引いている(lingering)。

ローマンの唯一の選択肢は,たとえ途中で間違ったことをしなければならないとしても,自分の仕事のスキルを駆使して家族との関係を回復しようとする。コスビーは ドミノを最も予想外の方法で倒す才能があり,満足感がある(rewarding)と同時にスピード感のあるスリラーを作り上げている。

8. Katabasis, R.F. Kuang
    カタバシス,R.F. クァン

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ケンブリッジ大学分析魔術(Analytic Magick)学科の大学院生2人は,最近亡くなった指導教官の魂を取り戻し,キャリアの見通しを立て直すため,彼を追って死後の世界(afterlife)へと旅立つ。『ポピー・ウォー(The Poppy War)』シリーズ,『バベル(Babel)』,『イエローフェイス(Yellowface)』の著者であり,自身もイェール大学博士課程に在籍するRFクァンは,学界における不均衡な(lopsided)力関係を痛烈に(gleefully)批判する(skewers),ファンタジーな探求物語(quest narrative)を紡ぎ出す。

キャンパスを舞台にしたこの小説では,キャンパスは文字通り地獄と化している。クァンは,ダンテの『神曲(地獄篇)(Inferno)』から,ペンローズの階段(Penrose stairs)といった難解な論理概念まで,あらゆるものを参考にしながら,自らが描く冥界の風景とメカニズムを創造する。そして,必死で競争心に燃える2人の学生を冥界の深淵へと突き落とし,彼らが生者の世界へ戻る道を見つけられるかどうか,そしてその過程で,教科書から得られる以上の価値ある何かを学べるかどうかを試していく。

7. Baldwin: A Love Story, Nicholas Boggs
     ボールドウィン:ある愛の物語、ニコラス・ボッグス

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アメリカで最も著名な作家の一人,ボールドウィンの私生活を親密に描いた 『ボールドウィン:ある愛の物語』は,著者の文学的洞察と,ハーレムの画家ボーフォード・ディラニー(Beauford Delaney),スイスの画家ルシアン・ハッパースベルガー(Lucien Happersberger),フランス人画家ヨラン・カザック(Yoran Cazac)など,数多くの親しい人々との繋がりを探求している。

ニコラス・ボッグスは,この思慮深くテンポの良い伝記を執筆するために数十年を費やし,アーカイブ資料を調査し,さらには,亡くなったと思われていたボールドウィンの生涯において重要な役割を担っていた生存者にインタビューを行った。本書は,ボールドウィンのアイデンティティを探り,作家,旅行者,米国の黒人,そしてロマンチストとして生きた経験が,彼の最も忘れられない作品にどのように影響を与えたかを綿密に読み解くものである。

6. A Marriage at Sea, Sophie Elmhirst
     海での結婚,ソフィー・エルムハースト

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モーリス・ベイリーとマラリン・ベイリー(Maurice and Maralyn Bailey)という夫婦は,冒険に憧れ(hankering),1970年代初頭 船を購入し,英国からニュージーランドへの数年にわたる航海に出た。しかし,その後に待ち受ける過酷な(harrowing)航海に対する備えが全くなかった。出航から9ヶ月後,船はクジラによって沈没し,ベイリー夫妻は太平洋を筏(raft)で漂流することになり,そこで118日間,信じられないほどのストレスにさらされることになる。

英国人ジャーナリスト,ソフィー・エルムハーストは,困難を乗り越えて生き延びた夫婦の実話を語る。彼女は,海難事故の試練と同じくらい,二人の間に繰り広げられた人間関係のドラマに深い関心を寄せる。まるでフィクションのように読める物語の中で,エルムハーストは,マラリンの冷静さ(unflappability)とモーリスの悲観主義(pessimism)を対比させながら,究極の試練に直面する二人のパートナーシップを考察する。

5. Audition, Katie Kitamura
    オーディション,ケイティ・キタムラ

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ケイティ・キタムラの “Audition” は,我々が通常想定する小説の枠組みに当てはまらないため,単純な記述はできない。そして,どれだけ読後感を伝えようと試みても,説明は難しい。キタムラのテーマがパフォーマンスそのもの,つまり,配偶者,親,芸術家,主体(subject)といった,我々が与えられた役割を演じようとし,そしてしばしば失敗する様子であることを考えると,これは当然と言えるだろう。

この小説は,名もなき(unnamed)主人公(protagonist),演劇出演が決まっている人気俳優が,ニューヨークで明らかに年下の男性と緊張感あふれる夕食を共にする場面から始まる。彼女は,自分が男性の恋人,あるいは母親と思われないかと,自分の印象を気にしている。そこに夫が現れ,緊張が高まっていく。この若者は一体誰なのか?キタムラは複数の回答の可能性を探求し,人々が互いにどのように関係を築くことができるのかという限界を探っている。『オーディション』は,スリリングであると同時に謎めいた(enigmatic)作品である。

4. A Guardian and a Thief, Megha Majumdar
     監視人と泥棒,メーガ・マジュムダール

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近未来のコルカタ(Kolkata)では,日常生活が逼迫(strain)しつつある。食料が不足し,暴力はエスカレートしている。マ(Ma)は脱出を決意し,父 ダドゥ(Dadu)と 2歳の娘ミシュティ(Mishti)を連れて出かけようとしている。夫はミシガン州で生活を始めており,マがしなければならないのは,3通のパスポートと気候難民ビザ(climate-refugee visas)を取得し,家族と共に飛行機に乗ることだけだ。

しかし,マがマネージャーとして働くシェルターの誰かが彼女に目を付けていた。家族のことを考えなければならないブーバ(Boomba)は,マのわずかな暮らしを羨ましく思い,食料と現金を盗むために彼女の家に押し入った時,意識せず3人の書類と脱出の希望を奪い去ってしまう。全米図書賞(National Book Award)の最終候補となった “A Burning” の続編で,メーガ・マジュムダールは2つの家族を激動の旅へと誘い,愛の強さに対する道徳の重さを測る。

3. One Day, Everyone Will Have Always Been Against This, Omar El Akkad
     いつか,誰もがこれに反対する日が来るだろう,オマール・エル・アッカド

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ツイートが拡散したことから始まり,この小説は,今年最も議論を巻き起こし,広く称賛された書籍の一つとなって,全米図書賞 - ノンフィクション部門(the National Book Award for Nonfiction)を受賞した。202310月,ジャーナリストで作家のオマール・エル・アッカドはソーシャル・メディアで,107日のハマスによる虐殺に対して イスラエル政府がガザの人々に与えた恐怖について 何も言わない人々を非難した。「いつか安全になり,物事をありのままに呼んでも 個人的な不利益がなくなり,誰かの責任を問うには手遅れになった時,誰もがずっとこれに反対していたことになるだろう。」

この意見は,回想録(memoir)であり論争(polemic)でもある彼の痛烈な(searing)著書に反映されている。この本は,エジプト,カタール,カナダで育ち(upbringing),その後,米国での子育ての経験を織り交ぜ,多くの人々が都合よく 「他者」 と分類する人々の,苦しみに無関心(apathy)である現状を鋭く分析している。 11月に全米図書賞を受賞した際,エル・アッカドは,本書で彼が訴えかけようとしている読者層の多くから本書が熱狂的に受け入れられたことに伴う緊張感について率直に語った:「大量虐殺(genocide)への反応として書かれた本について,祝賀の(celebratory)言葉で考えるのは非常に難しい。」

2. Things in Nature Merely Grow, Yiyun Li
     自然のものはただ育つ(邦題),イーユン・リー

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時に,最も複雑な経験を最もよく伝えるのは,最もシンプルな言葉である。『自然のものはただ育つ』で,イーユン・リーは,明快で鋭い(penetrating)散文(prose)を用いて,極めて個人的な悲劇の物語を語っている。2017年,リーの長男ヴィンセントは16歳で自殺した。7年後,当時19歳だった次男ジェームズも同じように亡くなった。全米図書賞の最終候補にもなったリーの回想録には,ジェームズの死後,彼女が悲しみという概念を拒絶しながらも,その経験と意味をページで掘り下げている様子が描かれている:「私は 『悲しみ(grief)』という言葉に反対する。現代文化では,それは終わりのある過程を意味するように思える。」と彼女は書いている。「そこに早くたどり着けば,早く自分が人生でスポーツマンシップに富んだ人間であることを証明でき,周りの人が気まずく感じることも少なくなるだろう」。リーは,喪失の痛みから立ち直ることに興味がない。彼女はそれを理解しようと努力し(endeavors),それでもなお続けようとする。

1. Heart the Lover, Lily King
    恋人へのハート,リリー・キング

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キャンパスでの三角関係(love triangle)を描いた,ホルモンが溢れる(hormone-fueled)物語として始まり,下品なセックスと英文学専攻の学生たちの刺激的な(heady banter)掛け合い(banter)がアクセントになっている(punctuated)この作品は,やがてはるかに深い意味を持つようになる。リリー・キングの “Heart the Lover” では,ジョーダン(Jordan)(『グレート・ギャツビー』の ‘Jordan Baker’ にちなんで名付けられたニックネーム)は,17世紀文学の授業で2人のスター学生と交流することになって 小説家になるという夢を抱く(toying with)大学生だった。

​​サムとヤシュは親友でありルームメイトでもある。ジョーダンは当初サムと付き合っていたが,本格的な恋の相手はヤシュだった- 彼は 20年以上経った後,落ち着いたジョーダンの生活に再び現れ,彼女の心を切り裂く。
キングの2020年のベストセラー “Writers & Lovers” の姉妹作である “Heart the Lover” は,親密な関係とその永続的な影響を描くキングの才能を如実に示している。ジョーダンとヤシュの関係の発展を描きながら,彼女は,若さゆえの確信(youthful certainty)と,人生と愛において実際に私たちがコントロールできるものがいかに少ないかという認識との間のギャップを明らかにしている(illuminates)。

(転載了)
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