2026年,世界の政治・経済 Top Risk
1998年に政治学者のイアン・ブレマーによって設立された世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社ユーラシア・グループ(Eurasia Group),1月5日 発表の “Top Risks 2026” を下記,拙訳・転載します。
(Risk 1,Risk 7 のみ 詳細を転載)
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Top Risks is Eurasia Group's annual forecast of the political risks that are most likely to play out over the course of the year. This year's report was published on 5 January 2026.
トップ・リスクは,ユーラシア・グループが年間を通じて最も発生可能性の高い政治リスクを予測する年次レポートである。今年のレポートは2026年1月5日に発表された。
Overview / 概要
2026年は転換期の年である。
地政学的に(geopolitical)非常に不確実な時期である。これは,二大大国である米国と中国の間で差し迫った紛争(imminent conflict)があるからではない。これはトップ・リスクですらなく,今年の「おとり(red herring)」である。台頭する中国が世界システムを自らの都合に合わせて作り変え,米国と同盟国が抵抗するという,第二の冷戦は(少なくとも今のところは)起こらない。また,ウラジーミル・プーチンが米国主導の秩序(US-led order)に対して長年抱いてきた不満(grievances)の結果としてヨーロッパで戦争が勃発しているにもかかわらず,米国とロシア間の緊張が制御不能に陥る(spiral out of control)恐れもない。
米国自身が,自らの世界秩序を解きつつある(unwinding)。世界で最も強力な国は政治革命の苦闘(throes)中にある。
Risk 1: US political revolution / 米国の政治革命
トランプは自身の権力への歯止めを解体し(dismantle),政府機構を掌握し,それを敵に対する武器として利用しよう(weaponize)としており,2026年には米国が世界的リスクの主たる発生源(the principal source)となるだろう。
米国は政治革命を経験している:ドナルド・トランプ大統領は,自身の権力への歯止めを体系的に(systematically)解体し,政府機構を掌握し,それを敵に対する武器として利用しようとしているのだ。
昨年,我々は「ドンのルール(Rule of Don)」について警告した; 戦術的な規範破壊(norm-breaking)として始まったものが,党派的な強硬姿勢(hardball)や行政権の行き過ぎ(executive overreach)を超越したシステムレベルの変革へと発展した。これは,最も野心的なアメリカ大統領が試みてきたこととは質的に(qualitatively)異なる。トランプの最初の任期中に維持されていた多くのガードレールが今や崩れつつある(buckling)ため,この革命が終わった後,米国がどのような政治体制になっているのか,もはや自信を持って言うことはできない。
トランプにとって,彼は不正選挙(rigged election),二度の党派的弾劾(partisan impeachments),数十件に及ぶ不当な重罪有罪判決(unjust felony convictions),そして二度の暗殺未遂事件(そのうち一件は彼を殺す寸前だった)を乗り越え,米国史上最大の政治的復活を遂げた。
トランプ大統領は,自身と同盟国にとっての最大の脅威は外部ではなく国内にあると見ており,彼は報復する義務があると信じている。政権はこの計画を民主主義への攻撃ではなく,民主主義の回復(restoration),つまり,政府を武器にして既に自分たちを攻撃していた,極めて腐敗した体制に支配された政治システムの必要な粛清(necessary purge)と捉えている。
2024年の大統領選では7,700万人以上の米国人がトランプに投票し,その多くがこの判断(diagnosis)に共感している:民主主義が選挙結果に重要だと答えた2024年の有権者のうち,過半数がトランプを選んだのは,彼を民主主義的価値観の擁護者とみなしたからではなく,システムが既に崩壊しており,それを打破できる(disrupt)人物を求めていたからである。 「トランプ主義(Trumpism)」は構造的なものであり,この最も根本的なレベルでは,トランプ支持者は彼らが求めていたものを手に入れている。
Risk 2: Overpowered / 圧倒する
中国は電子(electrons)に賭けている。米国は分子(molecules)に賭けている。今年,どちらが正しかったのかが明らかになるだろう。
Risk 3: The Donroe Doctrine /
ドンロー・ドクトリン(*モンロー・ドクトリンのモジリ)
トランプ政権は世界の警察官になりたいのではなく,米国の裏庭を直接支配しようとしている。
Risk 4: Europe under siege / 包囲されたヨーロッパ
ヨーロッパの政治的中枢は三大国全てで同時に崩壊しつつあり,米国の撤退によって生じた安全保障上の空白を大陸は埋めることができなくなっている。
Risk 5: Russia's second front / ロシアの第二戦線
ヨーロッパで最も危険な戦線は,ドネツクの塹壕から,ロシアとNATOのハイブリッド戦争へと移行するだろう。
Risk 6: State capitalism with American characteristics /
アメリカ的特徴を持つ国家資本主義
ニュー・ディール以来,最も経済介入主義的な(interventionist)米国政権は,近代米国史上かつてない規模で勝者と敗者を選ぶだろう。
Risk 7: China's deflation trap / 中国のデフレの罠
北京は今年,デフレの罠(deflationary trap)から抜け出すことはできないだろう;むしろ,輸出によって抜け出そうとし,他国を犠牲にして(at everyone else’s expense)安価な製品を世界市場に氾濫させるだろう。
中国のデフレス・パイラルは2026年に深刻化すると予想され,北京はそれを止めるために何もしないだろう。2027年に第21回党大会が迫る(looming)中,習近平は消費刺激策(consumption stimulus)や構造改革といった悪循環を打破する手段よりも,政治的支配と技術優位性(technological supremacy)を優先するだろう(prioritize)。
北京には危機を防ぐ手段があるが,生活水準は低下し(deteriorate),その影響(fallout)は海外にも波及し,世界第2位の経済大国は自ら作り出した罠から抜け出せないだろう。
中国の住宅価格は4年半にわたって下落しており,これは2008年の米国の金融危機に匹敵する家計資産の破壊であり,しかもその勢いは依然として加速している。消費者信頼感,投資,そして国内需要も急落している(cratered)。
北京はハイテク製造業が不動産の空白を埋めると大いに賭けた。しかし,国主導の投資は過剰生産能力を生み出し,国内需要の低迷はそれを吸収する十分な買い手がいないことを意味する。
その結果は「内向化(involution)」である:あまりにも多くの中国企業が,あまりにも少ない需要を追い求め,生き残るために価格を大幅に引き下げている。利益率は急落し,経営の堅調な(well-run)企業でさえも賃金と雇用を削減せざるを得なくなる。労働者の支出は減少し,需要はさらに弱まるため,企業は再び価格を引き下げる。
一方,景気循環が一巡するごとに債務返済は困難を極めていく。銀行や地方自治体は,ゾンビ企業(zombie firms)を生き延びさせ,融資の借り換えや地元の優良企業保護に努め,その結果,過剰生産能力が固定化されてしまう(entrenched)。債務デフレのスパイラルは自己増殖する(feeds on itself)。
ドナルド・トランプによる昨年の関税措置は状況をさらに悪化させ,重要な輸出市場を閉鎖し,中国企業は厳しい選択(grim choice)を迫られている;米国外で買い手を見つけるために価格を大幅に引き下げる(slash)か,第三国を経由して米国に輸送するかだ。どちらの道を選んでも,利益率はさらに圧迫される(squeezes)。現在,上場している中国の企業の4分の1以上が赤字であり,これは25年間で最高の割合となっている。
Risk 8: AI eats its users / AIはユーザーを食い尽くす
収益を上げ,高騰した企業価値を正当化しなければならないというプレッシャーの下,一部のAI企業は,社会と政治の安定を脅かす搾取的な(extractive)ビジネス・モデルを採用するだろう。
Risk 9: Zombie USMCA /
ゾンビUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)
USMCAが死んでも生きてもない,不安定な状態(staggers on)が続く中,北米貿易は宙ぶらりんの状態になるだろう。
Risk 10: The water weapon / 水兵器
水は,世界で最も危険な対立(rivalries)のいくつかにおいて,強力な武器になりつつある。
(転載了)
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