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2026年1月15日 (木)

2026年,世界の政治・経済 Top Riskの 日本への影響

1998年に政治学者のイアン・ブレマーによって設立された世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社ユーラシア・グループ(Eurasia Group),15日 発表のTop Risks 2026から “Top Risks 2026: Implications for Japan” を下記,拙訳・転載します。

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Eurasia Group's Top Risks of 2026

Top Risks is Eurasia Group's annual forecast of the political risks that are most likely to play out over the course of the year. This year's report was published on 5 January 2026.

IMPLICATIONS FOR Japan / 日本への影響

2026年における主要な地政学的リスクの中で,日本にとって最も大きなリスクは経済への影響である。日本はインフレ,円安,そして債務負担(debt burden)の増大(金利は30年ぶりの高水準)による経済的圧力にさらされながら,今年を迎える。高市早苗首相の支持率は極めて高いものの,有権者の経済不安への対応が不十分であれば,支持率は急速に低下する可能性がある。

高市は,有権者にとって最大の関心事である生活費の高騰に対処しつつ,低迷する経済を景気後退に陥らせることなく取り組むという困難な課題に直面している。さらに,今年のリスク(中国のデフレ経済,日米貿易・投資関係,米国・メキシコ・カナダ間の貿易交渉が日本企業に与える影響など)の影響は,首相の任務を困難にするものとなるだろう(not make her job any easier)。

以下は,今年の日本にとってのトップ・リスクに関する主要な結論(takeaways)である。

RISKS THAT MATTER MOST FOR JAPAN
日本にとって最も重要なリスク

トップ・リスク7(中国のデフレの罠:China's deflation trap)は,中国が日本の最大の貿易相手国であるため,2026年における日本にとって最も重大な脆弱性である。中国で日本型の「失われた10年(lost decade)」が始まる可能性(prospect)は,今年の日本の成長見通しにとって歓迎できないニュース(unwelcome news)である。

中国のデフレは,2つの点で日本経済に悪影響を及ぼす(hurt)。第一に,国内の熾烈な競争は,日本企業にとって厳しい環境(punishing environment)を作り出すだろう。
第二に,北京は昨年よりもさらに大規模な電気自動車(EV)などの安価な製品を海外市場に投入する(unleash)だろう。これらの製品は,特に東南アジアなどの地域で日本製品と競合し、日本企業の収益を圧迫する(putting pressure on the bottom lines)だろう。

しかしながら,中国経済の弱体化には,中国が日本に対してそれほど敵対的(belligerent)でなくなる可能性があるというプラス面(upside)もある。 2025年は、高市外相による中国の台湾侵攻に関する発言をめぐる日中対立(China-Japan row)で幕を閉じた。
中国はこれに対し、日本への観光客の取り締まり(clamping down),日本産水産物の輸入禁止措置の再導入(reimposing),沖縄周辺での軍事演習の実施といった対応をとった。しかし,中国経済の減速は,北京の対日姿勢を軟化させ,軍事的冒険主義(military adventurism)を抑制し,両国の外交関係の改善に繋がる可能性がある。

ワシントンが約束された投資を待つ中,日本は「トップ・リスク6」(アメリカ的特徴を持つ国家資本主義:State capitalism with American characteristics)の影響を強く受けることになるだろう。2026年には,日米経済関係における焦点は,日本が第2位の貿易相手国である米国への投資を拡大し(ramp up),ドナルド・トランプ大統領による新たな関税発動(imposing new tariffs)を阻止できるかどうかに一点集中することになる。

トランプを満足させるため,日本はトランプの任期満了までに5,500億ドルを米国に投資することを約束した。10月に高市がトランプ大統領と初めて会談した際,両首脳はエネルギー,AI,重要鉱物の分野で日米両企業が関与する4,000億ドル近くの潜在的投資計画を発表した。これは良いスタートと言えるだろう。しかし,トランプの警戒心(watchful eye)は日本に向けられている。

とはいえ,レッド・ヘリング(Red herring)(いわゆる(at large)「関税マン」)は日本の不安を和らげるはずだ。昨年4月の解放記念日からの関税による混乱は再び起こることはないだろう。トランプは依然として関税の脅威を振りかざして(brandish)圧力をかけるだろうが,ショックと畏怖(shock-and-awe)の段階は既に終わった。
関連して,2026年も保護主義的措置が自由化措置を上回り続けるものの,別のレッド・ヘリング(脱グローバリゼーション)が指摘するように,グローバリゼーションが解体される年とはならないだろう。これもまた,相互に連携した世界貿易システムの恩恵を受けている日本経済にとって明るいニュースである。

OTHER RISKS / 他のリスク

日本にとって直接的な経済的脅威は少ないものの,トップ・リスク1(米国の政治革命:US political revolution)は日本企業にとって頭痛の種となっている。日本は米国最大の直接投資国であり,日本企業は米国全土で,そして その政治システムの中で事業を展開している。
日本企業は,トランプの型破りなアプローチ,法の支配の無視(disregard for the rule of law),そしてプロセスの軽視(flouting)を懸念している(fret over)。その結果,日本企業は2026年の主要な事業決定において,米国政府への公開(exposure)を織り込む必要がある。

今年,特に重要な2つのリスクが,日本の主要産業である自動車セクターに課題をもたらすだろう。多くの日本の自動車メーカーがメキシコで事業を展開し,米国市場に輸出している。残念ながら,北米における自由で予測可能な貿易の時代は終わった。
これらの企業は,トップ・リスク9(ゾンビUSMCAZombie USMCA)で論じたように,米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の再交渉が今年どのように進展するかを注視するだろう。

ワシントンは,中国がメキシコを裏口として利用し,中国製品を米国に輸出することを阻止することに固執しており(fixation),これが交渉の最大の焦点となるだろう。メキシコから米国への自動車および自動車部品の輸出規制強化は,日本の自動車メーカーのビジネス・モデルを複雑化するだろう。
また,USMCAをめぐる慢性的な不確実性は,日本企業を悩ませ,計画に支障をきたすだろう。しかしながら,日本企業にとって朗報なのは,メキシコとカナダの実効関税率(effective tariff rates)は依然として世界のほとんどの国よりも低い水準にとどまるということだ。

日本自動車メーカーにとってもう一つの懸念は,トップ・リスク2(圧倒的な力:Overpowered)である。2025年末には,中国メーカーが初めて世界新車販売台数でトップの座を獲得し,20年以上その座を維持してきた日本メーカーを追い抜くと予想されていた。
日本の自動車メーカーはEV分野で大きく後れを取っており,中国メーカーは猛追している。そして,日本メーカーが米国市場向けにハイブリッド車とガソリン車の生産に注力し続ける限り,彼らの後れはますます深まるばかりだ。例えばインドネシアでは,中国のEVブランドが急成長を遂げ,かつて圧倒的なシェアを誇っていた日本のシェアが低下する中で,急速にシェアを奪っている。

今年のリスクの経済的な影響は日本にとって最も重要であるが,外交政策上のリスクも存在する。トップ・リスク3(ドンロー・ドクトリン:The Donroe Doctrine)は,トランプが西半球(the Western Hemisphere)を最重視していることから,日本にとって懸念材料となっている。日本は常にワシントンの最重要課題がインド太平洋(そして中国への対抗)に置かれることを望んでいるため,西半球への関心の移行は日本にとって歓迎すべきものではない。

しかしながら,ここでの「レッド・ヘリング」(勢力圏)は日本の不安を和らげる(assuage)のに役立つかもしれない。世界からの撤退を唱えている(rhetoric)にもかかわらず,米国の国益は依然として頑固にグローバルなままである。米国の国防費は記録を更新し続けている。中国との貿易摩擦における緊張緩和(détente)にもかかわらず,インド太平洋における米国の軍事態勢は弱まっていない;例えば,ワシントンは台北に対し,過去最大の武器売却パッケージを送付したばかりだ。こうした行動は,日本にとって大きな意味を持つ(speak volumes)。

ロシア・ウクライナ戦争は 遠く離れているものの,トップ・リスク5(ロシアの第二戦線:Russia's second front)は日本にとって重要な意味を持つ。第一に,日本は米国がロシアの侵略に立ち向かうかどうかという観点から(through the lens of)この戦争を捉え,そこからインド太平洋地域で同様の事態が発生した場合に米国がどのように対応するかを推測する。
第二に,日本は自国のエネルギー安全保障も考慮する必要がある:日本は依然としてLNGの約9%をロシアのサハリン2施設から輸入している。ロシアがほぼ 「のけ者(pariah)」状態にあるにもかかわらず,日本はこの施設から撤退しないと断固として(steadfastly)主張している。そして,日本が停戦の可能性の高まりを期待しているにもかかわらず,この状況は2026年も変わらない可能性が高い。

日本の株式市場は2025年に明るい材料となり,AI関連企業や半導体企業の好調もあり,非常に好調に推移した。日本は、トップ・リスク8AIがユーザーを食い尽くす:AI eats its users)の警告にもかかわらず,AIに関しては米国への投資拡大に意欲的である。AIは日米投資協定における優先分野の一つである。しかし,2026年にAIバブルが崩壊すれば,これらの日本企業にとって大きな痛手となるだろう(spell trouble)。

最後に,トップ・リスク4(欧州の危機:Europe under siege)は,ポピュリズムの機運が背景に浸透する中,日本の国内政治に影響を与える可能性がある。移民や生活水準の低下に対する欧州の怒りは日本にも存在し,その怒りが右翼ポピュリズムを煽っている(stoking)。
しかしながら,今のところ,高市自身の保守的な政策スタンスは,右翼ポピュリスト政党である参政党の政策スタンスを事実上吸収している(co-opted)。参政党は,昨年 過去最高の支持率を記録し,参院選で議席を獲得したが,その後,支持率は低下している。 2026年を迎えるにあたり,欧州で台頭する右派ポピュリズムが日本に定着する可能性は低いだろう。しかし,東京の政治屋(politicos)たちは注意深く見守るだろう。

(転載了)
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