新たな関税も違法だが ー トランプの思惑 あるいは 悪巧み
‘CATO INSTITUTE / CATO AT LIBERTY’,February 24, 2026付け
“The New Trump Tariffs Are Also Unlawful”
「トランプの新たな関税も違法」
の見出し記事を 下記,拙訳・転載します。
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2月20日,最高裁判所はトランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA:International Emergency Economic Powers Act)に基づき発動した関税を正当に無効と判断した(struck down)。政権の対応は迅速かつ当然ながら混乱を招いた:巨額の貿易赤字(trade deficits)を理由に,IEEPAに基づく関税を1974年通商法第122条(Section 122 of the Trade Act of 1974)に基づく10%(後に 15%)の関税に置き換えた。これらの新たな関税は,以前の関税と同様に,ほぼ確実に法律違反である(almost certainly violate the law)。
What Section 122 Actually Says / 第122条の実際の内容
第122条は1970年代初頭,米国が固定為替レート(fixed exchange rates)のブレトン・ウッズ体制(Bretton Woods system)からの移行を進めていた時期に制定された。この法律は,大統領に対し,「根本的な国際決済上の問題(situations of fundamental international payments problems)」に対応するため、最大15%の一時的な輸入関税,または割当制などのその他の貿易制限を(議会で延長の賛成票が得られない限り),最長150日間課す権限を与えている。
この法律では,このような状況を「米国の国際収支上の大規模かつ深刻な赤字」 および/または 「ドルが差し迫った大幅な下落(imminent and significant depreciation)」に直面する状況と定義している。
政権は現在、第122条の発動は米国の巨額の貿易赤字に対処する(address)ために必要だと主張している。しかし,貿易赤字は国際収支(the balance of payments)とは異なり,両者を混同することは,この法律の明確な文言(plain terms)を著しく歪曲する(serious distortion)ものである。実際,第122条の別の条項では,大統領が「大規模かつ持続的な米国の貿易収支黒字」に対処することで「根本的な国際決済(fundamental international payments)」問題に対処するため,一時的な貿易自由化措置を制定する(enact)権限を与えている。(強調追加)
したがって,議会が国際収支と貿易収支という異なる概念を互換的に(interchangeably)使用することを意図していたとは考えにくい。1974年通商法(the Trade Act of 1974)に関する上院財政委員会(Senate Finance Committee)の報告書は,議会が国際収支と貿易収支を区別するものとして理解していたことをさらに裏付けている。
The Economics Are Clear / 経済学は明快
国際収支は,一国と世界との間のすべての経済取引を要約したものである。国際収支は,経常収支(current account),金融収支(financial account)(準備資産を含む),資本収支(capital account)の3つの構成要素から成る。貿易収支は経常収支の構成要素の一つであり,財貨・サービスの貿易に加え,投資収益(investment income)の流入も含む。
米国が経常収支赤字(現在のように)を計上している場合,資本流入(すなわち資本収支と金融収支)は,実質的にドル単位で赤字を相殺する(offset it dollar-for-dollar)。逆もまた真なり(opposite is also true)で,国際収支は理論上ゼロでなければならない(つまり,経常収支黒字(current account surplus)は資本流出によって相殺されなければならない)。
ブレトン・ウッズ体制下では,各国は自国通貨の価値を米ドルを基準とした特定の為替レートに固定することに合意していた。米ドルは1オンスあたり $35の固定レートで金と交換可能だった。この制度下では,収入に対する支出が超過している国は,自国通貨を切り下げる(devalue)か,外貨準備を用いて不均衡を補填する必要があった。
米国は ブレトン・ウッズ体制時代の大部分において経常収支黒字を計上していたが,1960年代には軍事費,対外援助(foreign aid),そして対外投資の組み合わせにより,純金融流出額が増加した。これらの米ドルを保有する外国人が金への交換を試みるため,米国は公式の金準備を用いてこの不均衡を補填し,ドルの価値を維持した。
経済学者のフィル・マグネス(Phil Magness)は,国際収支の「赤字(deficit)」とは,公式準備金の取引残高がマイナスになることを指すと指摘している。最終的に,米国は他国がシステムへの信頼を維持できないほど多くのドルを「発行し(printed)」,システムは崩壊した。そして,今日まで続く変動相場制(floating exchange rate system)へと移行した。
現在の国際通貨制度(international monetary regime)である変動為替レートの下では,自国通貨を固定する(peg)ために外国為替市場に定期的に介入(intervene)せず,資本流入不足に悩まされていない国(米国など)は,国際収支の不均衡を補うために外貨準備を活用する必要がない。
自国通貨は自由に減価する(depreciate)ことができ,それによって輸出と国内資産を支えることができる。(ミルトン・フリードマン(Milton Friedman)は1960年代に,国際収支問題の解決策として変動為替レートを提案した:「変動為替レート制度は国際収支問題を解消する […] [通貨]価格は変動するかもしれないが,為替危機を脅かすような赤字や黒字は存在し得ない。」)
そして今日に至るまで,ピーターソン研究所のキンバリー・クラウジング(Kimberly Clausing)とモーリス・オブストフェルド(Maurice Obstfeld)が指摘するように,米国の変動為替レートと魅力的な金融資産の豊富な供給は,米国が巨額の経常収支赤字をファイナンスできることを意味する。元国際通貨基金(IMF)高官で,現在はハーバード大学経済学教授を務めるギータ・ゴピナス(Gita Gopinath)も,ソーシャル・メディアで同様の結論を述べている。「米国債(US debt)と株式(equities)への需要が十分にある限り,そして実際そうである限り,米国は 『決済(payments)』問題を抱えていない。貿易赤字のファイナンスは容易だ」。
実際,米国は世界最大の貿易赤字を抱えているものの,同時に世界最大の金融収支黒字も享受している。したがって,米国が「大規模かつ深刻な国際収支赤字」を抱えていると考える真摯な経済学者はほぼいない。
The Administration’s Own Lawyers Admitted It
政権側の弁護士も認めた
おそらく,さらに深刻なのは,トランプ政権自身の司法省(DOJ:Department of Justice)が,第122条が現状には適用されないことを認めたことだ。連邦巡回控訴裁判所(the Court of Appeals for the Federal Circuit)におけるIEEPA訴訟において,司法省は反論書簡で,第122条は「大統領が緊急事態宣言において指摘した懸念は、国際収支赤字とは概念的に異なる貿易赤字に起因するものであり,現状には適用されない」 と指摘した。
司法省は最高裁判所でこの主張を撤回したが,政権は今となっては信憑性を持って反論することはできない。そして,前述の理由から,第122条が貿易赤字に対処するための関税を容認していることを証明することは困難だろう。
Courts Should Grant Injunctive Relief
裁判所は差止命令による救済を認めるべき
トランプ政権が第122条を行使したのは,同法で認められている150日以内に訴訟が完結する可能性は低いと理解しているからに他ならない。政権は,第122条が,IEEPAの下で違法に確立した関税体系を概ね再現するために 第301条および第232条に基づく関税を準備する上での橋渡し的な役割を果たすことを明確にしている。
第122条への異議申し立てを審理する裁判所は,政権の法的主張を慎重に精査(scrutinize)すべきである。 ‘eBay Inc. v. MercExchange, L.L.C., 547 U.S. 388, 391 (2006)’ に基づき,国際貿易裁判所(CIT:the Court of International Trade)がIEEPA関税訴訟における最初の判決で言い渡したような恒久的差止命令(permanent injunction)を求める原告(plaintiff)は,以下の点を立証する必要がある:
「(1) 原告が回復不能な損害(irreparable injury)を被ったこと;(2) 法律上認められる救済手段は,当該損害を補償するには不十分であること;(3) 原告と被告の間の困難の均衡を考慮すると,衡平法上の救済が正当化されること;(4) 恒久的差止命令によって公共の利益が損なわれることはないこと。」
CITがIEEPA関税訴訟においてこれらの4つの要素が認められたと認定した事実は,原告にとって励みとなるかもしれない。もっとも,CITは判決を言い渡した後にこのことを説明しただけである。
とはいえ,トランプ対CASA社事件(145 S. Ct. 2540 (2025))における最高裁判所の判決を踏まえると,このような差止命令の範囲は限定的になる可能性がある。この判決により,連邦巡回控訴裁判所は,IEEPA関税訴訟においてCITが発した包括的差止命令を取り消し,差し戻した。さらに,差止命令による救済の可能性を曇らせているのは,第122条関税の期限である150日を過ぎる前に,長期化する訴訟が解決する可能性は低いという事実である(議会が延長に賛成票を投じない場合)。
The Bottom Line / 結論
トランプ政権は,経済の破壊的な保護主義(destructive protectionism)を追求する中で,法の支配への忠誠心を全く示していない。大統領がこれらの広範な関税を課す権限を求めるのであれば,議会に要請するのが正しい道だ。
2026年は選挙の年であり,関税が極めて不人気となっていることを考えると,それはありそうにない。むしろ,政権は法的対応のパターンを続ける可能性が高い。つまり,第122条に基づく関税を150日の期限まで維持し,第301条と第232条を通じてIEEPA関税制度を大まかに再構築しようとするだろう。
(転載了)
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司法を機能させるのには 時間がかかります。



































































































































































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