トランプ,狂気の法則
‘TIME’,Mar.26,2026付け
“The Method to Trump’s Madness”
「トランプの狂気の法則」
を下記,拙訳・転載します。
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by Jeffrey Sonnenfeld and Steven Tian
企業のCEO,メディアの評論家(pundits),与野党双方の議会指導者,世界各国の首脳,軍関係者,そしてあなたの近所の住民まで,誰もがホワイト・ハウスから発せられる過激な言葉(volatile rhetoric)と暴力的な行動(violent actions)に困惑している(confused)と認める。
ドナルド・トランプ大統領のあらゆる行動を分析しよう(dissect)と試みた文献は山ほどある。現代史において最も意見が分かれ(polarizing),最も影響力のある(consequential)人物である彼について,他に何を語る必要があるのだろうか。特に,傍観者(casual observer)から見れば,トランプのやり方はまさに混沌そのものに見える。
多くの洞察力のある観察者は,トランプを狂った(crazy),混沌とした(chaotic),あるいは非合理的な(irrational)人物と決めつけるという誤りを犯してきた。
その結果,トランプに関する書籍が数多く(shelves of)出版されているにもかかわらず,支持者も批判者も,トランプが権力を獲得し(gain),振興し(wield),維持する(retain)ために繰り返し用いる,独特で危険ながらも周到に練られた戦略(methodical strategic playbook)を真剣に位置づけして(mapped)こなかった。トランプについてどのような見解を持っていようとも,この戦略(playbook)を理解する価値はある。
トランプの一見予測不能な(erratic)行動は,特定の戦略的行動の明確な(discernible)反復パターンによって支えられている(anchored)。これらはトランプ独自の「十戒(10 commandments)」と言えるだろう。これは聖書に基づく倫理規範(ethical conduct)ではなく,トランプ独自の権力原則(power principles),つまり、しばしば驚くべき効果を発揮する一方で,時として予測可能な形で裏目に出る,世渡り上手で常識を覆す戦術の集合体なのである。
トランプがこうした中核的な戦略に頼る姿勢は,哲学者アブラハム・カプラン(Abraham Kaplan)が「道具の法則(The Law of the Instrument)」と呼んだもの,つまり 「少年にハンマーを与えれば,何でも釘に見える」という法則を彷彿とさせる。状況がメス(scalpel)を必要とするにせよ,レンチを必要とするにせよ,トランプはハンマーを振り回す,この場合は,10本あるハンマーのうちの1本だが。
「トランプ」と「戦略的リーダーシップ」という言葉は決して同じ文脈で使われるべきではないと主張する人たちに,私はきっぱりとこう言いたい,それは間違いだ。あなたの主張は理解できる。トランプは予測不可能で,情報不足で,影響されやすく,衝動的だから,戦略など持ち合わせていない,と言うだろう。
確かに,完全に間違っているわけではない。トランプは古典的な意味での戦略家(strategist)ではない。ニッコロ・マキャヴェッリ(Niccolo Machiavelli)や孫子(Sun Tzu)の再来ではない。しかし,トランプの戦略的洞察力(acumen)と意図性(intentionality)を過小評価するのは間違いだ。
もしトランプが愚かだ(dumb)とするなら,彼は狐のように狡猾だ(dumb)。彼はめったに本を読まず,もし今大学の試験を受けたら合格できないかもしれないが,鋭い(shrewd)生存本能(instinct for survival)と,カメレオンのような適応力で,あらゆる行動を導いている。彼は衝動的に(impulsively),時には爆発的に(explosively)意見を述べるが,戦略的な計画(strategic game plans)は固く秘めている。
Make no mistake about it: There is a method to the madness.
誤解しないでほしい:この狂気には,ちゃんとした理由があるのだ。
これらの10の戒律(10 commandments)は,トランプの晩年の(late-life)政治的転向を超越し(transcend),彼の生涯全体にわたっており,不動産(real estate),メディア,エンターテインメント,政治といった多岐にわたる分野にわたる(spanning sectors)彼の特異なキャリアを統一するもの(unifying)である。
Commandment 1—Trump's hub-and-spokes model of leadership: Centralizing all power in your own hands
第一の戒律 ― トランプ流ハブ・アンド・スポーク型リーダーシップ:全権力を自らの手に集中させる
トランプ大統領は,複数の暫定任命者(interim appointees)を裁判所が権限不足と判断して失格させたこと(disqualifying)で、その権限を阻まれてきた(rebuffed)。しかし,これはアルビン・トフラー(Alvin Toffler)のような未来学者(futurists)が何年も前に予言した「アドホクラシー(adhocracy:場当たり的な統治)」の結果ではない。トランプは伝統的な指揮系統(chain-of-command)に基づく官僚制(bureaucracy)を軽蔑し(disdains),太陽系が自らの周りを回る太陽のように,絶対的な権力を独占している。彼は意図的に側近たち(top lieutenants)の間に分裂を植え付け,自らの権力を抑制できる統一的な連合(unified coalition)が決して生まれないようにしている。
Commandment 2—The real art of Trump's deal: Maximizing leverage by starting with a punch in the face versus building trust
第二の戒律 ― トランプ流交渉術の真髄:信頼構築ではなく,まずは相手に強烈な一撃を食らわせることで交渉力を最大限に高める
トランプは今週末,ホルムズ海峡の封鎖が解除されなければ,イランの発電所全てを爆撃すると脅迫し,世界を震撼させた。しかし,その後,金融市場が暴落する(tumbled)と,トランプは態度を軟化させ(retreated),建設的な協議が進行中だと主張した。
トランプにとって,交渉(negotiation)は相互信頼の構築とは全く関係なく,ひたすら最大限の力(leverage)を生み出し,それを振るうこと(wielding)に尽きる。彼は交渉(bargaining)の冒頭で,常軌を逸した(outrageously)極端な要求を突きつけ,相手を完全に混乱させる(disorient)「衝撃と畏怖(shock and awe)」作戦を用いる。そうすることで,その後の要求は,比較すれば妥当に見える,というのが彼の考え方だ。
Commandment 3 — Divide and conquer: Build walls, not bridges
第三の戒律 ― 分断統治:橋ではなく壁を築く
トランプは,団結(unity)や連立(forming coalitions)を求めるのではなく,敵対者(adversaries),諸機関(institutions),そして外国との間に楔を打ち込むことに積極的に取り組み,部外者ならではの鋭い洞察力(unerring eye)で,それぞれを次々と不利な状況へと追い込んでいる(shunting)。
彼は,自らの権力に抵抗する集団行動(collective action)を阻止するために,この戦術を意図的に用いている。だからこそ,彼はNATO,NAFTA,EU,ビジネス・ラウンドテーブルといった,自らの行動の自由を制限する集団を不満に思う(bemoans)。敵対勢力を混乱させ(disorganized),不安定な状態に保つことで,トランプは自分だけが頂点に君臨(reign)できると信じている。
Commandment 4—How Trump makes money: The art of stealing the deal
第4の戒律 ― トランプの金儲け術:取引を盗む術
トランプ一家が,大統領の貿易協定や仮想通貨(cryptocurrency)・賭博市場における規制緩和策(deregulatory moves)から利益を得ていることは,政治専門家にとっては驚くべきことではないはずだが,実際にはそうではない。彼は,初期投資(up front)を最小限に抑えるように取引を組み立てる。
彼は,可能な限り多くの損失リスクを他者に押し付け,利益を最大限に確保する。これは,彼の金融取引だけでなく,彼が行うほぼすべてのことに見られる行動パターンである。
Commandment 5—Trump behind closed doors: The fluidity of friends, foils, and foes
第5の戒律 - トランプの密室での行動:友人,敵,そして対立者の流動性
トランプがニューヨークの社会主義者であるマムダニ市長を温かく迎え入れたことは,評論家たち(commentators)を驚かせた。しかし,実際には,トランプは人間関係を根本的に取引的なもの(transactional)と捉え,相手を自分にとっての即座の有用性(immediate usefulness)と,自分にもたらす支持基盤(constituency)に基づいて評価している(evaluating)。
そのため,彼の味方と敵の境界線は事実上存在しない(nonexistent)。トランプは,自分にとっての有用性が増減するにつれて(waxes or wanes),人々をこれらのカテゴリー間で自在に切り替えていく(seamlessly rotate)ことができるのだ。
Commandment 6–The wall of sound: Trump's perpetual noise machine of constant, overwhelming distractions
第6の戒律 ― 音の壁:トランプの絶え間ない圧倒的な情報操作による騒音製造機
トランプは,見出しを飾るような行動(headline-generating moves)によって,彼が国家の議題(the national agenda)から排除したい国内の不振問題(failing domestic issues)を報道から消し去る。不利な報道(damaging narratives)が長引く(linger)恐れがあるたびに,トランプは自ら作り出した論争と注意をそらすための騒音(diversionary noise)でメディアのエコシステムを溢れさせる(floods)。
この意図的な(deliberate)挑発行為は,大量の新たな見出しで悪い報道を窒息させ(suffocates),追いつこうと必死にもがく対立勢力を混乱させ(disorienting),疲弊させる(exhausting)。一方,あらゆる問題,あらゆる場面でトランプが常に存在感を示すことで、その反響効果(ricochet effects)は彼自身の権力を増幅させ、実際よりも強力に見せかける。
Commandment 7—Trump's winners and losers: Avoid losers like the plague and pursue selective retribution
第7の戒律 ― トランプの勝者と敗者:敗者を疫病のように避け,選択的な報復を行う
トランプの世界観は厳密に二元的だ(binary):勝者と敗者しか存在しない。当然ながら,彼は地位や支持基盤を失ったと見做した者を容赦なく(ruthlessly)避け,自らの支配に対する脅威とみなした者を標的を絞った選択的な報復(selective vengeance)によって無力化する(neutralize)。しかし,権力の本質を鋭く見抜くトランプは,強力な敵に直面した際には,声高に不満を訴える者(squeaky wheel)を力で押しつぶすことも厭わない。また,かつての(erstwhile)同盟者や支持者であっても,地位を失った者には容赦なく切り捨てる(tossing aside)傾向がある(is prone to)。
Commandment 8—Rewriting history through the sleeper effect: When relentless repetition becomes truth
第8の戒律 ― スリーパー効果による歴史の書き換え:執拗な繰り返しが真実となる時
否,オハイオ州スプリングフィールドのハイチ難民は,隣人のペットを食べてない。しかし,トランプがこのデマ(hoax)を執拗に広めたため,米国人の約25% がトランプ氏の偽情報を信じるようになった。トランプは,自らの主張を絶対的な確信をもって(with absolute certainty)執拗に(relentlessly)繰り返すことで,事実を書き換える。膨大な(sheer)量と繰り返しによって,トランプの主張は,その真偽(veracity)に関わらず,最終的に支持者によって事実として受け入れられる。
Commandment 9—Sultan of insult: Reducing complexity to simplicity
第9の戒律 ― 侮辱の達人:複雑さを単純化する
無神経な侮辱の達人(master of the insensitive insult)であるトランプは,複雑な敵対者(complex adversaries)を単純で嘲笑的な風刺画(mocking caricatures)へと矮小化する(strips down)。その風刺画は,誇張され(exaggerated)戯画化されている(caricatured)とはいえ,しばしばわずかな(shred of)真実に基づいている。攻撃を仕掛けることで,敵対者が自らを定義する前に,印象的で記憶に残る,破壊的なレッテル(devastating labels)を貼って世間の目に焼き付ける。常に攻撃を仕掛け,敵対者を絶えず(perpetually)防御に貼りつかせ続ける。
Commandment 10—Donald the great: The role of grandeur, image, and heroic aura
第10の戒律 ― 偉大なるドナルド:壮大さ,イメージ,そして英雄的オーラの役割
トランプは絶えず自らの英雄神話(heroic myth)を作り上げ,それを永続させ(perpetuates),自らを唯一無二の救世主(savior)として位置づけている。彼は派手な(ostentatious)演出(spectacle)と金メッキの壮大さ(gold-plated grandeur)を用いて成功を演出し,支持者たちに富,権力,意義,そして帰属意識という身近なイメージを与えている。彼らは自分たちよりも大きな大義に属していると考えている。そして,その大義において,最終的にはすべてはトランプに,ただトランプ一人に帰結するのだ。
トランプの軌跡(trajectory)は,企業戦略や政治戦略(corporate and political strategy)におけるあらゆる常識を覆してきた。しかし,この10の戒律こそが,彼を驚異的な成功へと導き,比類なき高みとどん底(highs and lows)へと突き進ませたのだ。トランプはしばしば,無知(ignorant)で衝動的だ(impulsive)と批判される。しかし,これはトランプの芝居がかった言動(histrionics)が,時に功を奏し,時に裏目に出ることもある,意図的な行動であるという現実を見落としている。
結局のところ,トランプのアプローチはパラドックスである:紛れもない戦術的才能(tactical brilliance)を持ちながらも,明白で巨大な盲点に阻まれている(hindered)。この矛盾の根底には,繰り返される一連の行動パターンが明確に見て取れる。トランプに対する評価は人それぞれだが,彼がいかに権力を獲得し,行使し,維持してきたかというメカニズムを理解することは不可欠だ。彼を正しく評価するためには,まず彼の独特な思考回路(mind works)を理解する必要がある。
この文章は,ジェフリー・ゾンネンフェルド(Jeffrey Sonnenfeld)とスティーブン・ティアン(Steven Tian)共著の 『トランプの十戒(Trump’s Ten Commandments)』(Worth/Simon& Schuster,2026年3月31日発売)より,許可を得て抜粋・加筆したものである。
(転載了)
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意識せず振舞える,身体に染みついた行動規範 ― 真のMadness!
しかし,法則を理解していれば 彼の言動に驚かされることは少なくなるかも知れません。
「トランプの十戒」の表紙上部に次の文があります。
『ゾンネンフェルドは 他の人々が ドナルド・トランプの狂気としか見做さないものの中に潜む 10の手法を見事に解読した。
トランプの行動原理を知りたいと願う者は,この本を読まずにはいられないだろう。』
出版が少し早ければ 高市さんの準備に役立ったのでしょうが ・・・ 。
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