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2026年7月15日 (水)

2025年の ‘the Oxford Word of the Year’,“rage bait” とはー

OXFORD UNIVERSITY PRESS’,Dec.1,2026付け
The Oxford Word of the Year 2025 is rage bait
の見出し記事を 下記,拙訳・転載します。

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The wait is over—the official Oxford Word of the Year 2025 is rage bait.
ついに発表,オックスフォードの 「2025年 ワード・オブ・ザ・イヤー(今年の言葉)」に選ばれたのは,“rage bait” だった。

我々の言語専門家は,この1年間の人々の会話や関心(preoccupations)を反映する候補として,“rage bait”,“aura farming”,“biohack” の3語を最終候補に選出した。3万人が参加した3日間の投票を経て,専門家らは投票結果,世間の反応(sentiment)やコメントの傾向,そして言語データ(lexical data)の分析結果を総合的に検討し,最終的に “rage baitを選定した。

Why rage bait? / なぜ “rage bait” なのか? 

rage bait” とは,「苛立ち(frustrating)や挑発(provocative),あるいは不快感を与えることで,意図的に(deliberately)怒りや憤り(anger or outrage)を引き起こす(elicit)よう設計されたオンライン・コンテンツで,通常,特定のウェブ・ページやソーシャル・メディア上のコンテンツへのトラフィック(訪問者数)やエンゲージメント(反応)を増やす目的で投稿されるもの」 と定義される。

社会不安(social unrest)やオンライン・コンテンツの規制をめぐる議論,そして ‘digital wellbeing’(デジタル機器との健全な付き合い方)への懸念が2025年のニュースを席巻する中,専門家たちは “rage bait” の使われ方に変化が生じていることに注目した。その変化は,オンラインにおける「注目(いかに注目が向けられ,いかにそれが求められるか)」や 「エンゲージメント」,「倫理」のあり方について,私たちが語る際のより根本的な変化を示唆している。実際,この言葉の使用頻度は過去12ヶ月間で3倍に増加した。

rage bait” という言葉がオンラインで初めて使われたのは2002年のことだった。当時,‘Usenet’への投稿において,追い越しを求めてパッシングをしてきた後続車に対し,ドライバーが示す特定の反応を指す言葉として用いられ,そこには 「意図的に相手を苛立たせる」という概念が含まれていた。その後,この言葉は拡散力の高いツイート(バイラル・ツイート)を指すネット・スラングへと変化し,現在では,プラットフォームやクリエイター,トレンドといった,オンライン上の投稿内容を決定づけるコンテンツ・ネットワーク全体を批判する文脈でも使われるようになっている。

それ以来、この言葉は、苛立ちや不快感を抱かせたり、意図的に対立を煽ったりすることで怒りを引き起こすよう設計されたコンテンツを指す代名詞となり,世界中の報道機関やコンテンツ制作者の間で広く使われる一般的な用語として定着した。

また,これはエンゲージメント(関与)を高めるための実証済みの手法(proven tactic)でもあり,特に「パフォーマンスとしての政治(アピール重視の政治活動)」において頻繁に見られる。ソーシャル・メディアのアルゴリズムが刺激的な(provocative)コンテンツを優遇するようになるにつれ,この手法は「怒りの収穫(rage-farming)」と呼ばれるような実践へと発展した。これは,意図的な誤情報や陰謀論に基づく素材などを “rage bait”(怒りを誘う餌)としてコンテンツに盛り込み,人々の反応を操作しつつ、時間をかけて怒りとエンゲージメントを醸成しようとする,より組織的かつ継続的な試みである。

Isn’t rage bait two words? / rage bait” は2語ではないのか?

オックスフォードの「今年の言葉(Word of the Year)」には,単語(singular word)だけでなく,辞書編纂者(lexicographers)が 「一つの意味の単位」とみなす表現も選ばれることがある。

rage bait” は,「激しい怒りの爆発(a violent outburst of anger)」を意味する “rage” と,「魅力的な餌(an attractive morsel of food)」を意味する “bait” という2つの言葉から成る複合語(compound)である。どちらの語も英語において古くから定着しており,その起源は中英語(Middle English)の時代にまで遡る。

語源的に(etymologically)関連のある ‘clickbait’(クリックベイト) と非常によく似た性質を持ち - どちらもオンラインでのエンゲージメントを促し,時に不快感(annoyance)を抱かせるという目的を共有している - その一方で,“rage bait” は特に「怒り」,「不和」(discord),「分断」(polarization)を煽ること(evoking)に焦点を当てているという点で異なる。

rage bait” という言葉が独立した用語(standalone term)として登場したことは,英語という言語の柔軟性を浮き彫りにしている。つまり,既存の2つの言葉を組み合わせて特定の文脈(この場合はオンライン空間)でより具体的な意味を持たせたり,現代社会の状況を反映し,人々の共感を呼ぶような新しい言葉を生み出したりすることができる。

今年の選出語について,‘Oxford Languages’ の社長であるキャスパー・グラースウォールは次のように述べている :

「ディープフェイクの著名人やAI生成のインフルエンサーから,バーチャルなパートナーやマッチング・アプリに至るまで,テクノロジーや人工知能が我々の日常生活にますます深く入り込んでいる。そうした中で、2025年はオンラインとオフラインの双方において,『我々は本当は何者なのか』という問いが浮き彫りになった一年であったことは否定できない。

rage bait”(怒りを誘発して反応を引き出す手法)という言葉が存在し,その使用頻度が劇的に急増しているという事実は,我々がオンライン上で引き込まれかねない『操作の手口』に対して,ますます意識的になっていることを示している。

かつて インターネットは,クリックと引き換えに好奇心を刺激し,人々の注意を引くことに主眼を置いていた。しかし,現在では,我々の感情や反応を『乗っ取り(hijacking)』,左右しようとする動きへと劇的に変化している。

これは,テクノロジー主導の世界において『人間であるとはどういうことか』をめぐる議論や,オンライン文化の極端な側面についての対話が続く中で,自然な流れとして生じたことのように感じられる。

昨年の “brain rot”(脳の堕落)が,際限のないスクロールによる精神的な疲弊(mental drain)を捉えたのに対し,“rage bait”(怒りの餌食)は,意図的に怒りを煽り,クリック数を稼ぐために作られたコンテンツに光を当てている。

そして,この二つの言葉は,怒りがエンゲージメントを生み出し,アルゴリズムがそれを増幅させ,絶え間ない露出が我々の精神を疲弊させるという,強力なサイクルを形成している。これらの言葉は単なるトレンドを定義するだけでなく,デジタル・プラットフォームが我々の思考と行動をどのように変えている(reshaping)かを明らかにしている。

毎年,このキャンペーンが好奇心,議論,そして何よりも参加を促しているのを見るのは素晴らしいことだ。‘The Oxford Word of the Year’ は,我々の集合的な言語(collective language)を形作る力について立ち止まって考える機会を与えてくれる。来年がどんな年になるのか,今から楽しみだ。」

(転載了)
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