‘ZME SCIENCE’, November 1, 2022 に
“14 Japanese concepts that will help you see life in a different light”
「人生を別の視点から見るのに役立つ14の日本の概念」
と題する記事がありました。
日本人が読んでも興味深い内容で,日本人の私が知らない言葉(概念)もありました。
下記,拙訳・転載します。
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日本は,古代の哲学と新しい技術を融合させた独自の文化で知られており,多くの場合,我々のほとんどが慣れ親しんでいるものとは異なる価値観や原則を特徴としている。実際,日本文化の重要な概念の多くは,直接的な翻訳がなく,非常に複雑である。
1 Kaizen 2 Ikigai
3 Wabi-sabi 4 Oubaitori
5 Mottainai 6 Yūgen
7 Kanso 8 Omoiyari
9 Shizen 10 Seijaku
11 Gaman 12 Datsuzoku
13 Shikata ga nai 14 Fukinsei
Kaizen / 改善
日本語の “Kaizen”,または「継続的改善(continuous improvement)」という言葉は,止まることなく物事をより良くする方法に焦点を当てた哲学である。小さいながらも継続的で前向きな変化が大きな違いを生むという考えである。 それは基本的に,無意味に思えることであっても,常に改善する方法を探しているやり方である。
“Kaizen” は,一般的な哲学 (および人生の生き方) として,またはさまざまなタスクやプロセスへのアプローチとして使用できる。ただし,ほとんどの場合,プロまたはビジネスのコンテキストで使用される。“Kaizen” は,企業が競争力を維持し,リスクを最小限に抑えることができるように,プロセスとシステムの継続的な改善に努めるのに役立つ。ビジネスでは,“Kaizen” には,関係者全員とすべての会社プロセスの絶え間ない改善(improvement)が含まれる。
Ikigai / 生きがい
“Ikigai” は,あなたが存在する理由であり,朝目覚める理由である-あなたが得意であり,あなたに喜びをもたらし,世界が必要としているものである。
ほとんどの人は,自分には “Ikigai” がないと主張するが,“Ikigai” はただ空から降ってくるだけではない - 見つけなければならない。何世紀にもわたって,この言葉は,人々が生活の中で努力すべきものとして使用されてきた。“Ikigai” を持つことの重要な部分は,あなたの情熱,またはあなたに喜びをもたらすものを見つけ,それを世界の利益とあなた自身の改善のために使用する方法を見つけることである。
“Ikigai” を見つけるのは最初は難しいかもしれないが,努力する価値がある。何があなたを幸せにし,あなたを満たしてくれるのかを理解するために時間を費やせば費やすほど,それはより簡単になる。そして,自分よりも大きな何かに向かって努力している限り -それが社会にプラスの影響を与えることであろうと,単に自分自身を幸せにすることであろうと -最終的にはすべてうまくいく!
Wabi-sabi / わび・さび
“Wabi-sabi” は,不完全さを受け入れる(embracing)という考えを体現する日本の概念である。 シンプルで不完全な美しさを強調することに焦点を当てており,多くの場合,自然の要素に見られるシンプルさと調和に焦点を当てる。
これは仏教の教えに由来する概念であり,おそらく日本の美意識(aesthetics)で最も広くいきわたっている(prevalent)方向性の 1つである。多くの文化 (特に西洋文化) が完璧を求めることを強調する一方で,“Wabi-sabi” は真正性(authenticity)と不完全さの美しさを強調する。
“Wabi-sabi” の支持者(proponents)は,職人技(craftsmanship)が謙虚さ(humility)をもって完璧を目指すことなく使われるときに真の芸術が存在すると信じている。この概念に関する本の著者であるアンドリュー・ジュニパー(Andrew Juniper)は,著書の中でこの哲学の別の側面について次のように述べている:「物や表現が私たちの中に穏やかな(serene)哀愁(melancholy)と精神的な憧れをもたらすことができるなら,その物は “Wabi-sabi” と言える。」と書いている。
“Wabi-sabi” の概念は単純に見えるかもしれないが,私たちの生活や周囲の見方に大きな影響を与える可能性がある。環境をより深く理解し,創造性を高め,幸福感を高めるのに役立つ。 自分の環境で “Wabi-sabi” を探求する時間をとることで,あらゆる瞬間に新しい平和と喜びを見つけることができる!
Oubaitori / 桜梅桃李
“Oubaitori” は,自分を比べない精神を具現化している。一つの点 あるいは 他の部分で,誰かと自分を比較するのは良くない,と誰もが一度は耳にしたことがあると思うが,“Oubaitori” はそれを次のレベルに引き上げる。
言葉自体は美しい比喩(metaphor)である。“Oubaitori” とは,通常,「桜梅桃李」という漢字で書く。それぞれの文字は,桜,杏(apricot),桃(peach),梅(plum)など,さまざまな種類の花を表している。すべてが異なっており,すべてが独自の道で優れたものであり,比較する必要はない。木々の咲き方が違うように,人間にも違いがある。自分の成果を他の人のものと比較する場合でも,自分の外見を他の人の外見と比較する場合でも,比較は苦痛になる可能性がある。私たちは,自分が期待に応えてないと,まるでみんなをがっかりさせるかのように,がっかりするかもしれない。比較はまた,目の前の機会をつかむのではなく,他の人が何をしたか,または彼らがどのように見えるかに専念しているため,機会を逃す可能性がある。
“Oubaitori” の背後にある考え方は単純である:自分に欠けているものに焦点を当てるのではなく,自分が豊富に(in abundance)持っているすべてのもの,つまり自分の強みと能力を称賛するということである。これにより,比較不安や自己不信から解放され,より幸せな生活を送ることができる。
Mottainai / もったいない
日本語の “Mottainai” の概念は(大まかに「なんてもったいない(What a waste)」を意味する言葉だが」完全な意味では,自然の贈り物に対する畏敬の念と感謝の気持ちを伝える)は,豊富な資源と,その資源を賢く無駄を省いて利用することに焦点を当てた生き方である。この哲学は,日本の経済や社会の発展に大きな影響を与えてきたが,私たちの個人生活にも当てはまる。
“Mottainai” は私たちの日常生活にさまざまな方法で適用できる (予算編成から衣服やファッションの選択まで) が,最も頻繁に使用されるのは環境関連の状況である。この哲学は,人々がどれだけ使用し,消費するかに注意を払い,資源の使用について批判的に考えることを奨励している。これにより,私たちはより効率的で持続可能になる。これは,持続可能性とゼロエミッションの概念に非常によく適合する。
多くの西洋人は,この概念を理解するのが難しいと感じるかもしれないが (特に,消費主義と真っ向から対立しているため),日本では非常に成功していることが証明されており,無駄よりもマインドフルネスを強調する環境キャンペーンが成功している。
Yūgen / 幽玄
“Yūgen” は伝統的な日本の美学において重要な概念であり,日本の多くの概念と同様に,その意味は大まかにしか定義されていない。具体的には,単語の正確な翻訳は文脈によって異なる。中国の哲学書では「深い」 もしくは「神秘的な」という意味で使われていたが,日本文化では,詩が漠然と暗示しているものの微妙な奥深さ(profundity)を意味する。
“Yūgen” は英語に訳されていないが,特に目に見えないものに関して,「宇宙の深遠で神秘的な美しさ」を意味すると言われている。美しさそのものを表す言葉ではなく,美しいものをよく理解せずに見たり、聞いたり,考えたりするときの感情である。あまり注意を払わずに,おそらく誰もが一度は経験したことがある,とらえどころのない(elusive)感覚である。
14 世紀から 15 世紀の日本の美学者(aesthetician)である世阿弥元清は,“Yūgen” の例を次のように説明している:「花で覆われた丘の向こうに沈む夕日を眺めること。戻ることを考えずに広大な森をさまようこと。海岸に立って,遠くの島々の後ろに消えていく小舟を見つめること。雲の中で見られたり失われたりする野生の雁の飛行を凝視する(contemplate)こと。」
Kanso / 簡素
“Kanso” とは,シンプルであることはエレガントであり,私たちが経験する日常の瞬間に見出すことができるという考えを指す。“Kanso” は,シンプルで無駄のない(clutter-free)ライフスタイルを実現する“Wabi-sabi” の 7つの柱の 1 つである。
上記で見たように,“Wabi-sabi” は不完全さを通して美しさを見つけることを強調しているが,特に“Kanso” は物事をシンプルに保ち,雑然とせず,機能的に保つことに関心がある。“Kanso” は,私たちが家をどのように設計し,整理するかという点で特に影響を与える可能性があるが,生活の指針としても使用できる。
重要なことだけに焦点を当て,物事をエレガントで機能的に保つことで,本当に重要なことを正しく理解し(appreciating),それに集中することができる。
Omoiyari / 思い遣り
日本の “Omoiyari” の概念は,無私無欲な(selfless)慈悲心(compassion)の形であり,他人の経験を理解しているという感覚である。それは日本文化の重要な部分と考えられており,他人のニーズや懸念に共感し,さらにはそれを予測することも含まれる。他人の優しさを感じたり,心の温かい気持ちや考え,行動を見たりすると,その人の “Omoiyari” に感謝する。
もちろん,他の人と接するときは,誰もが独自の視点と経験を持っていることを覚えておくことが重要であることは誰もが知っている (または少なくとも知っておくべきだ)。これは,他の人の意見,信念,または価値観を尊重することを意味し,- たとえそれらがあなたのものと異なっていても -決定や判断を下す前に常に注意深く耳を傾けることを意味する。
それは実際には常に起こるとは限らない。しかし,このコンセプトの背後にある考え方は,誰もが “Omoiyari” を実践すれば,より大きな成功と関係者全員のより良い関係につながるということだ。この概念は,従業員とマネージャー間の関係を改善するためにビジネスの場でよく使用される。また,子供たちが自己中心的ではなく,周囲の人にもっと順応する(attuned)ための有用な教育ツールでもある。
Shizen / 自然
“Shizen” は自然(nature)を表す日本語だが,それよりも深い意味で使われることが多い言葉である。 “Shizen” とは,自然の自発的で(spontaneous)本質的な側面,および人間と自然のつながりを指し,国の歴史,哲学,芸術を形作ってきたアプローチである。
これは,私たちの周りのすべての生命体を尊重するだけでなく,私たちの環境との調和を大切にする生き方を示している。“Shizen” とは,私たちは自然の一部であり,その繊細なバランスを理解し維持することで,自分自身と他の人にとってより良い未来を創造できることを意味する。
Seijaku / 静寂
“Seijaku” とは,日常生活のストレスから解き放たれ,エネルギーに満ちた(energized)穏やかな状態だが,集中して行動できる状態である。それは,日々の混沌の真っ只中における平穏(tranquility)と決意の感覚である。
この哲学は何世紀にもわたって武士階級(samurai class)によって実践されてきており,それ以来,人生を成功させるためのアプローチとして世界中の多くの人々に採用されてきた。 “Seijaku” の目標は,単に自分自身と平和になることではない;また,困難な状況で冷静さ(composure)を保ち,感情を効果的に管理することでもある。このバランスの取れた状態で生きる方法を学ぶことで,誰もが直面する障害や課題を克服できる。
Gaman / 我慢
“Gaman” とは,世界の,一見耐え難い重荷でさえ,忍耐(patience)と尊厳(dignity)をもって立ち向かわなければならないという哲学である。
コンセプトは,困難な状況を通じて自分の尊厳を維持するという考えを表している。“Gaman” は武士の行動規範と密接に関係しており,困難な時期でも名誉と誠実さを持って生きることの重要性を強調している。
“Gaman” は,個人の強み,回復力,忍耐力に焦点を当てることにより,建設的な方法でストレスに対処する方法と見なすことができる。また,精神的および肉体的に自分自身の世話をすることを奨励し,困難な時期に集中してやる気を維持できるようにする。“Gaman” を実践することの利点は数多くあります。プレッシャーの下で落ち着きを維持するのに役立ち,ストレッサーに対する回復力を構築し,関係/カップルを強化し,仕事のパフォーマンスを向上させ,不安レベルを軽減する。ストレスの多い状況に直面している場合でも,単に全体的な健康状態を改善したい場合でも,何らかの形で “Gaman” を生活に取り入れることは,あなたとあなたの周りの人々の両方に利益をもたらす!
Datsuzoku / 脱俗
“Datsuzoku” とは,日常生活からの逃避,しきたりからの猶予,通常の行動や社会が期待することから抜け出すことを意味する。
“Datsuzoku” には魅力的なものがある。それは -私たちが自分の運命に責任があるように - 生きていてコントロールしていると感じさせる。では、なぜ “Datsuzoku” はそのような魅力を持っているのか?
使い古されたパターンが壊れると,創造性と機知が生まれる。私たちの多くは、毎日同じことをすることの暗い(bleak)気持ちを経験しており,このアプローチから良い結果が得られることはめったにない。 観光客として街を訪れる,違う店に行く,食べたことのないものを食べる,ホーム・オフィスの代わりにカフェで仕事をするなど,この規範の外に出ることで,私たちは,機能をそれほど変更することなく,まったく新しい方法で人生を経験することができる。
Shikata ga nai / 仕方がない
“shikata ga nai”(又は「変えられないことを受け入れる」)という日本の概念は,人々が現在の瞬間を生き,自分でコントロールできないことを心配するのではなく,自分でコントロールできることに集中することを教える考え方である。
“Shikata ga nai” は,ストレスの多い状況への対処メカニズムとしてよく使用される。困難な課題や不愉快な状況に直面したとき、過去を変えることはできないことを覚えておくと役に立つ,だから 何故 イライラして悩むのか? また、現在では多くのことを変えることはできない。代わりに,現在の状況に建設的に対処する方法に焦点を当てるべきである。これには,現実をありのままに受け入れ,手元にある情報に基づいて最善を尽くすことが含まれる。
受け入れることは簡単ではないかもしれないが,最終的には平和や静けさ(tranquility)などのよりポジティブな感情状態につながる。また,人生の結果をコントロールする能力でさえ,すべてに限界があることを理解しているため,人生の困難に大きな視点で取り組むことができる。
この哲学は,仕事,家庭生活,人間関係など,人生のさまざまな分野に適用できる。人生を楽しみながら責任のバランスをとる方法を学ぶことが重要である。別のことで忙しいためにある分野を無視すると,潜在的な機会や成長の機会を逃すことになる。
Fukinsei / 不均斉
日本の “Fukinsei” のコンセプトは,生活における非対称性と不規則性の美しさを評価すること(appreciating)である。理論によれば,全てのもの -自然から人まで - が唯一で特別なものと見なすことができる。これもまた “Wabi-sabi” に繋がるコンセプトである。
“Fukinsei” は,物事を別の視点から見ることを奨励し,私たちの全体的な人生観にポジティブな影響を与える。私たちの世界の変化(variance)と予測不可能性を受け入れることで,私たちはあらゆる瞬間に喜びを見つける可能性が高くなる。
この原則は,何にでも当てはまる - 夏の予期せぬ降雨を楽しんだり,秋の万華鏡(kaleidoscope)のような色彩に感動したり,友人や家族のちょっとした癖(quirks)を大切にしたりすることである。物事が常にあるべき姿のままであることを期待することを手放すと,新しい経験と機会に自分自身が開かれる。
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生活はさまざまな角度から見ることができるが,多くの場合,単調で非生産的な考え方にとらわれてしまう。別の文化的視点から物事を見ることで,価値と平和を見つけることができるかもしれない。
(転載了)
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浅学にして 「桜梅桃李」を初めて知りました。74年の人生で この言葉を発した人は周りにいなかったし,読んだ本にも出てきませんでした。
恥ずかしい。
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